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全国のとりくみを交流し、女性の力で部落解放運動を大きく前進させよう

「解放新聞」(2024.04.15-3098)

 「世界経済フォーラム」が毎年発表している2023年版「ジェンダーギャップ」指数によると、日本は146か国中125位(前年は116位)で、低順位が続いている。

 とくに、女性の国会議員の数は、国会議員全体(衆議院議員・参議院議員の合計の定数713人)で114人と依然として少ない状況である。国会議員だけではなく、女性の管理職に占める割合(男女格差指数)も低いのが現状だ。

 日本の人口は年々減少し、少子高齢化社会を迎えている。政府は今年3月12日に、「育児・介護休業法」の改正案を閣議決定し、今国会に提出するとしている。内容は、子育て中の柔軟な働き方の拡充や、男性の育児休暇の取得状況の公表をはじめ、従業員が100人を超えるすべての企業に取得状況の公表を義務づけることや、介護が必要になった従業員への支援制度などが盛り込まれた。今後も男女がともに働き続け、仕事(ワーク)と生活(ライフ)の両立が可能となるような社会の実現をめざすためには、働きやすい環境整備をはじめ、各種休業制度の充実と待機児童の解消などが重要な課題だ。

 現実には女性にたいする差別が存在しており、性別による役割分業は当然のようにある。育児や家事、介護の労働の時間は女性の方がはるかに多く、男女の賃金格差、管理職における女性の比率、非正規雇用に占める女性の比率など、雇用の分野をはじめ、女性の社会進出における具体的な男女間格差の実態は改善されていない。政府や国会議員が条約や国内法の具体化に真剣にとりくまなければ差別の実態は改善されないのは当然である。

 暴力には、戦争や殺人などの命を奪う犯罪、家庭内暴力、強制性交、強制わいせつ、DV(ドメスティク・バイオレンス=配偶者や恋人からの暴力)、子どもへの性的虐待、女性性器切除や戦時下の性暴力、セクシュアル・ハラスメント、ストーカーなど多様な形態と背景がある。また、セックスワーカーへの蔑視や、性的少数者(LGBTQ+)への攻撃などジェンダーにたいする暴力も強まっている。

 これまで、2007年の柳澤伯夫・厚生労働大臣の「女性は産む機械」発言をはじめ、麻生太郎・自民党副総裁(前財務大臣)ら政治家や官僚などによる女性差別発言が続発している。2023年2月には、岸田首相や首相秘書官による同性婚をめぐる差別発言も明らかになった。また、杉田水脈・衆議院議員はアイヌ民族や、LGBTQ+などの性的少数者にたいする差別発言をはじめ、性被害を訴えた女性ジャーナリストにたいしても「落ち度があった」「女性はいくらでもウソをつける」などと発言した。杉田議員は過去にも差別発言をおこなっており、2016年2月、国連女性差別撤廃委員会に参加したときも、自身のブログに「チマ・チョゴリやアイヌ民族のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」と投稿した。当時は議員ではなかったが、衆議院議員にふたたび当選したあとも、ブログは消去せずに投稿されたままだった。そのブログの記事にたいして、アイヌ女性は2023年9月に札幌法務局、在日コリアン女性たちは2023年10月に大阪法務局に申し立てをおこない、それぞれの法務局から民族差別であるとして「人権侵犯」と認定され「説示」を受けた。しかし、杉田議員は「人権侵犯」と認定されてもなお、現在も自身を正当化する発言をインターネット上で発信し続けている。このように「人権侵犯」と認定されたことは大きいが、強制力や罰則がない。私たちは、今後も国内人権機関の創設や包括的な差別禁止法の制定に向けてとりくんでいかなければならない。

 部落差別や女性差別、障害者差別、LGBTQ+などにたいする差別の撤廃に向けた闘いと、複合差別にもしっかりと視点を置いたとりくみが必要だ。差別の実態を訴えるためにも、自治体で、男女共同参画審議会委員の一般公募があれば積極的に応募し、マイノリティ女性の声を反映させていこう。

 さらに、2022年5月「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(「困難女性支援法」)が成立し、今年4月に施行された。「困難女性支援法」は都道府県、市町村の支援の責務が規定されており、現在、都道府県で基本計画づくりがおこなわれている。とくに、大阪府と愛知県の基本計画に「出自」という文言が明記されたことは大きな前進である。今後も、都道府県、自治体が策定する基本計画に、マイノリティ女性の声を反映させていくとりくみをすすめよう。

 これまで、アイヌ女性や在日コリアン女性、部落女性の三者でおこなったアンケート調査結果や、国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告をふまえ、関係省庁との交渉にとりくんできた。今後も、マイノリティ女性にたいする施策の充実と、国による実態調査を共同で要求するなど、ねばり強く働きかけをしていかなければならない。また、旧「優生保護法」によって強制された不妊手術の問題では、2022年2月、大阪高裁は、国に賠償を命じる初めての判決を言い渡した。今後も、国家賠償訴訟を支援し、国の責任の明確化と謝罪を求めていこう。ハンセン病家族訴訟においても、2019年6月に熊本地裁が国への損害賠償を命じたが、ひき続き、国の差別政策の誤りを明確にしていくために支援を強めていこう。

 夫婦別姓制度に関しては、「家族の一体感が失われる」と発言する自民党議員の反対で導入の指針を示した法制審議会の答申から四半世紀たったいまも実現していない。しかし、今年3月8日の国際女性デーには、日本経済団体連合会(経団連)や経済同友会などが、岸田首相に「選択的夫婦別性」の法制化を求める要望書とともに、1000筆を超える署名を提出した。「選択的夫婦別姓制度」の早期実現を求めるとりくみは大きく広がっている。

 さらに、朝鮮学校・幼稚園の無償化排除反対のとりくみ、日朝国交正常化や「慰安婦」問題の解決など、日朝、日韓友好連帯活動や日中友好運動にも積極的にとりくむ必要がある。また、沖縄・辺野古の米軍新基地建設の強行は沖縄だけの問題ではなく、日本社会における差別構造の問題であることをしっかりと捉え、反戦・平和に向けた共同闘争として積極的にすすめていこう。

 女性をとりまく状況は大きく変化している。5月18、19日に群馬県高崎市でひらく第67回全国女性集会での実践交流、討議の成果を活かし、部落解放運動だけではなく、さまざまな差別と闘う国内外の女性たちと反差別・反貧困のネットワークをつくることが求められている。

 今日、ロシアによるウクライナ侵略戦争が長期化し、2023年10月7日以降のパレスチナ自治区ガザ地区では、イスラエル軍による非人道的なジェノサイド(集団殺害)がおこなわれるなど、国際社会における対立や分断がいっそう深まっている。岸田政権は、旧統一教会問題や裏金問題で支持率が低迷しているが、防衛費の増額や憲法改悪をはじめ、武器輸出を制限する「防衛装備移転三原則」の見直しをおこない、武器輸出を増やそうと、軍事大国化へ向けた姿勢をより鮮明にしている。私たちは、こうした社会的政治的情勢に抗して、女性部が先頭に立って差別と戦争に反対し、憲法改悪を断固阻止する広範な闘いを強化しよう。

 部落解放運動が果たす役割はますます重要になっている。女性差別をはじめあらゆる差別を許さず、ジェンダーによって役割を強制されたり、生き方を制限されたりすることのない社会の実現に向けて、部落女性の力を総結集して、第67回全国女性集会を成功させよう。

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