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石川一雄さんの遺志を引き継ぎ、狭山第4次再審闘争に勝利しよう

「解放新聞」(2025.07.05-3143)

 狭山再審闘争は、請求人の石川一雄さんが3月11日に死去し、第3次再審請求が終了したため、つれあいの石川早智子さんが請求人となって4月4日に第4次再審を請求し、東京高裁第4刑事部に係属されることになった。その第1回目の三者協議が6月10日ひらかれ、期待していた筆跡鑑定、万年筆インク鑑定などの証人尋問の採否は決定されず、少し先に延ばされることになった。しかし、第3次再審で積みあげた数々の新証拠や意見書はそのまま生きており、第4次再審闘争の勝利のために、ひき続き石川早智子さんを支えながら、鑑定人尋問の実施から再審開始、無罪判決獲得まで闘いの手を休めることなく支援運動をすすめよう。当面は新100万人署名や全国各地の集会開催にとりくもう。

 6月10日の三者協議には、東京高裁第4刑事部の家令和典・裁判長と担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団は、竹下政行・事務局長ほか7人の弁護士が出席した。三者協議では、裁判官が、第4次再審請求書の内容について弁護団に釈明を求めたので、弁護団は第4次再審請求書の主張と新証拠の関連などを整理したものを提出することになった。これは第4次再審請求の申し立ては、第3次再審請求で提出、主張してきたものをすべて提出しているが、第4次再審請求書で引用していないものがあり、裁判官がそれについて釈明を求めたもので、弁護団は早急に整理して書面を提出することになった。

 また、裁判所は、弁護団、検察官双方に「刑事訴訟規則」286条にもとづいて意見書の提出を求めた。「刑事訴訟規則」286条では、「再審の請求について決定をする場合には、請求をした者及びその相手方の意見を聴かなければならない」とあり、裁判所はそれにもとづいて、弁護側、検察側に意見書の提出を求めたものである。

 また、検察官は、万年筆インク鑑定(L鑑定人の蛍光X線分析鑑定)、スコップについてのF鑑定人の意見書にたいする反論を9月末までに提出するとした。これらの新証拠は弁護団が昨年12月に提出したもので、検察官は、3月におこなわれた第3次再審の三者協議で、5月中旬に提出するとしていたものだ。弁護団は迅速な対応を求めた。

 次回の三者協議は10月中旬におこなわれる。部落解放同盟中央本部は、求めていた筆跡や万年筆インクに関する鑑定人尋問の実施がすぐに実現にいたらなかったが、第3次再審で積みあげた数々の無実の新証拠や意見書はそのまま生きており、第4次再審闘争の勝利のために、ひき続き石川早智子さんを支えながら、鑑定人尋問の実施から再審開始、無罪判決獲得まで闘いの手を休めることなく支援を続けることを、全国の支援者によびかけた。

 石川一雄さんの突然の死去によって裁判は第4次再審へと移ったが、われわれは以下の基本方針に沿って狭山第4次再審闘争を続けていかなければならない。

 基本方針の第1は、石川一雄さんの遺志を引き継いで無罪判決をかちとるまで闘いを続けることである。
 62年にわたって続けてきた狭山裁判の闘いは、残念ながら石川一雄さんが亡くなってしまったため、第3次再審が終了するという事態となった。しかし、石川一雄さんが無実であり、狭山事件は警察のつくったえん罪事件であることに変わりがない。第3次再審では、万年筆のインク鑑定をはじめ、コンピュータによる筆跡鑑定など開示された証拠をもとに数々の無実を証明する鑑定書や新証拠を提出してきた。その新証拠を前面に押し出して、再審を実現し、無罪判決の日まで闘う。石川さんの遺志を継いで請求人になった石川早智子さんを全面的に支えて、完全無罪判決をかちとるまで闘いを続けていく。

 第2は、部落にたいする不当な差別を糾弾する闘いとして狭山闘争を闘うことである。狭山事件は、被差別部落にたいする予断と偏見のなかでつくられたえん罪事件であり、部落差別を糾弾する闘いである。狭山闘争は、もちろん犯人の汚名を着せられた石川一雄さんのえん罪を晴らす闘いであるが、一人石川一雄さんだけの闘いではなく、全国6000部落300万人に着せられた濡れ衣を晴らす闘いである。また、部落に向けられた差別を糾弾し、部落民の名誉と権利を取り戻す闘いである。この狭山闘争の原点を確認して闘いを続ける。

 第3は、えん罪をなくす闘いとして、広くえん罪で苦しんでいる人たちと連帯して闘うことである。
 昨年9月、袴田事件の袴田巖さんが58年ぶりに再審裁判によって無罪をかちとった。しかし、いまもえん罪で苦しんでいる人がたくさんいる。やってもいない事件の犯人にされ、長い間牢獄で過ごさなければならない、その人の無念な気持ちを考えたとき、えん罪をなくすことは、日本の大きな政治的課題である。憲法は基本的人権の尊重をうたっているが、えん罪は人間としての名誉だけではなく、人生そのものを奪うもっともひどい人権蹂躙(じゅうりん)であり、人権侵害である。62年にわたって狭山事件を闘ってきたわれわれは、もうこれ以上、えん罪で苦しむ人が出ないように、すべてのえん罪被害者と連携して、えん罪をなくすための運動をすすめなければならない。取り調べの可視化、代用監獄や証拠開示の問題、再審手続きの不備など、狭山闘争をとりくむなかで、明らかにしてきた司法の矛盾をなくすために「再審法」改正を中心に司法の民主化のために国民運動をすすめていこう。

 中央本部は第4次再審の当面の闘いとして、以下のとりくみをよびかけた。一つ目は、各都府県連で石川一雄さん追悼・狭山第4次再審勝利集会をひらくことである。石川一雄さんを追悼するとともに、第4次再審がはじまったことを同盟員や支援者に伝えるために各都府県連が工夫して集会をひらくようによびかけたい。
 集会では、金監督による追悼のショートムービーや、一人芝居、神田香織さんの講談などを活用してほしい。

 二つ目は、「第4次再審勝利!新100万人署名」のとりくみである。本部では、新たに第4次再審で事実調べ・再審開始を求める新100万人署名運動を提起しているが、当面10・31までに50万筆を目標にとりくもう。

 三つ目は、「再審法」改正のとりくみである。狭山第4次再審の闘いは、「再審法」改正とセットで闘うことが重要である。仮に再審開始が実現できても、検察の妨害で相当の期間引き延ばされる可能性があることを考えれば、狭山第4次再審の闘いは「再審法」改正とセットの闘いとしてすすめることが大事である。

 「再審法」改正では、昨年、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(会長:柴山昌彦・衆議院議員(自民党))が結成され、今年5月末の議連総会では、「刑事訴訟法」改正案の条文まで了承された。しかし、自民党、公明党、日本維新の会が、国会提出の了承を得る党内手続きをすすめなかったために、議連でまとめた法案は野党6党により6月18日に衆議院に提出され、秋の臨時国会へ継続審議となった。日弁連は、6月3日に議員立法による「再審法」改正の早期実現を求める市民集会を開催し、石川早智子さんも参加し、一日も早い「再審法」改正を訴えた。ひき続き「再審法」改正のために地元の国会議員への要請や地方議会での意見書採択、首長の賛同表明などのとりくみをすすめていこう。

 石川一雄さんは3月11日、入院先の入間川病院で死去した。もう少しで再審開始の入口となる鑑定人尋問が実現するかもしれないという矢先の死去である。石川さんはどんなに無念であったことだろうか。石川一雄さんの人生は、えん罪を晴らすための闘いの人生そのものだった。彼は、狭山事件で、誘拐殺人事件の犯人という汚名を着せられ、いらい62年間、無実を訴え続けた。別件で逮捕されてから32年間は刑務所のなかから無実を訴え、1994年に仮出獄で出所し、96年に早智子さんと結婚してからは二人で全国各地をめぐり、無実を訴えた。彼の人生は、まさにえん罪を晴らし、正義を取り戻すための闘いの人生そのものだった。

 その石川一雄さんが無念の死を遂げたため、石川一雄さんの遺志を引き継いで、早智子さんが第4次再審を申し立て、第4次再審がはじまった。狭山事件の再審開始をかちとり、無罪判決を石川さんの御霊の前に報告できるよう、部落解放同盟の各都府県連は全国各地でいっそう創意工夫を凝らしながら支援運動をすすめていこう。

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