「解放新聞」(2025.08.05-3146)
8月23〜24日、第57回全国高校生集会・第69回全国青年集会を福岡市内でひらく。
全国的に部落解放運動に携わる若年層が減少していくなかで、この全高・全青の参加者も年々減少傾向にある。また、これまでの被差別部落=部落出身者や部落住民が集住する地域という構図は大きく崩れ、部落のアイデンティティをもつ若者たちをはじめ、部落にルーツをもつ者たちが部落外に出ていく実態もある。部落出身であるなどの自覚なく、ある日突然差別に直面するというケースも増えてきている。
みずからが置かれている社会的状況とともに、そういった実態をふまえ、どうすれば多くの仲間とつながれるのか、部落・地域を離れた若者とのネットワークづくりなど、今日的な課題を含め議論をすすめていかなくてはならない。
世界各地で戦争や紛争が勃発し、対立や分断の深刻化とともに軍事的緊張が高まっており、第2次世界大戦後に形成された国際秩序が揺らいでいる。
私たちは、「戦争は最大の人権侵害である」として、人権と平和の確立を求める共同の闘いをすすめてきたが、人権や平和への課題が、いままで以上に大きく後退している。「対岸の火事」と捉えず、戦争や紛争があることに慣れてしまうことなく、一人ひとりが声をあげていくことが大切である。
今年は、第2次世界大戦終結から80年となり、同時に広島と長崎に原爆が投下されて80年となる。2024年10月、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞した。この受賞は、核兵器使用や第3次世界大戦も起こりかねない現状への危機感と、それを防ごうとする国際社会からのメッセージといえる。ところが政府は、唯一の戦争被爆国でありながら核廃絶に向けた「核兵器禁止条約」を批准せず消極的な姿勢をとるとともに、情勢に便乗し軍事拡大を推しすすめている。憲法改悪や「戦争する国づくり」に向けた一切の策動を許さず、広範な共同の闘いがいっそう重要になっている。
また、そうした国際情勢を大きな要因として、エネルギー資源をめぐる問題の発生や、世界的に物価高や同時不況におちいっている状況がある。そして、格差や貧困が拡大するなかで、欧米諸国をはじめ日本でも、現状への不安や不満が安易に差別・排外主義につながり、既存政党への反発を背景にそういった政治勢力が拡大しており、人権や平和、環境などの課題の後退をいっそう深刻なものにしている。
この間おこなわれた東京都知事選や兵庫県知事選挙では、SNSなどを政治・選挙活動に活用する手法が注目を集めたいっぽうで、デマやフェイクニュースがインターネット空間で拡散され、選挙に大きな影響をおよぼした。そして、虚偽情報の拡散、それに踊らされた者らの攻撃により複数の自殺者が生み出されていることは、深刻な社会問題となっている。
この7月におこなわれた参議院選挙でも、「日本人ファースト」などと外国人が優遇されているから自分たち・日本人が苦しんでいるという内容のデマが演説やインターネット空間で発信され、とんでもない勢いで拡散されており、選挙をもちいたヘイトスピーチ・差別扇動にもつながっている。
差別の禁止や人権侵害の救済などの法整備が追いついておらず、泣き寝入りするしかない、不安や恐怖を抱えながらの生活を余儀なくされている人びとが多くいる。誰もが安心して暮らせる社会の確立に向け、自分たちが将来どんな社会に置かれるのか、どんな社会にしたいのかといった視点も持ちながら、法制定に向けたとりくみも含め考えていくことが必要である。
1963年5月に埼玉県狭山市で発生した高校生誘拐殺害事件=狭山事件で犯人に仕立て上げられ、62年にわたり無実を訴え続けていた石川一雄さんが今年3月、86歳で急逝した。直接の原因は誤嚥(ごえん)性肺炎だったが、長きにわたる裁判闘争が身体を蝕(むしば)んでいたことはいうまでもない。
狭山事件は、身代金を取りにあらわれた犯人を取り逃がした警察が、その失態を取り繕うために被差別部落にたいする差別意識を利用し、石川一雄さんを犯人にでっち上げた、部落差別にもとづくえん罪事件である。
無念のうちに亡くなった石川一雄さんの遺志を引き継ぎ、第4次再審請求を申し立てた石川早智子さんを全力で支援しよう。
また、証拠開示の法制化や再審開始決定にたいする検察官の抗告禁止、事実調べの保障、請求の承継など再審手続きを盛り込んだ「再審法」改正に向けたとりくみもすすめていかなくてはならない。
62年という長い歳月を背景に、狭山事件を知らない若者も増えている。あらためて青年ら若者間でも狭山事件の学習や石川一雄さんの無実を訴える行動の企画や参加にとりくみ、再審請求を引き継いだ石川早智子さんを支援し、再審・無罪を実現しよう。
今年は、1975年に発覚した、被差別部落一覧の書籍が秘密裏に販売され企業などが購入し就職差別に利用していた「部落地名総鑑」事件から50年となり、60年に総理府の附属機関として設置された同和対策審議会が、内閣総理大臣から受けた「同和地区に関する社会的及び経済的諸問題を解決するための基本的方策」についての諮問にたいし、65年に提出した「同和対策審議会答申」から60年である。
しかし、部落差別は強まりを見せており、各地の意識調査でも明らかなように差別意識が悪化傾向にあるなかで、インターネット上では、被差別部落の所在地さらしやアウティング、差別書き込みがあとを絶たない。なかでも、2016年2月に鳥取ループ・示現舎(インターネット上における当時のアカウント名・出版社名)が『復刻版 全国部落調査』と称して被差別部落所在地一覧の書籍の出版を予告するとともに、そのデータなどをインターネット上に掲載した、「全国部落調査」復刻版出版事件については、裁判闘争を展開していたが、24年12月に最高裁が原告・被告双方の上告を棄却したことで、23年6月に出された東京高裁判決が確定した。
確定判決(東京高裁判決)では、部落差別が現在の住所・本籍だけでなく、過去や親族の情報なども差別の判断材料になり身元調査などがおこなわれる実態がふまえられ、基本的には出版の差し止めなどが認められた。そして、「差別されない権利」とその侵害も認められるなど、大きな成果をかちとった。
しかし、差別禁止・人権救済制度が不備なために、民事裁判で訴えることしか手段がないことは大きな問題であり、差別を受けた側が差別であることを証明しなければならない理不尽さも抱えている。また、家族や親族、関係者などに被害がおよぶことが懸念されることや、過去の被差別体験などから原告になりたくてもなれない者も多くいた。「差別されない権利」を確立させ、実効性ある差別禁止や人権侵害救済の法制定を求めていかなくてはならない。
第57回全高・第69回全青に向けて、各地での活動を強化・拡大しよう。事前集会やオルグにもとりくみ、多くの高校生・青年の結集をよびかけよう。
実践交流や意見交換をおこない、交流を深め、集会を終えたあとも続くつながりを構築しよう。そして、各地の高校生・青年運動の発展につなげることを期待する。
都府県連・支部、青年部で、多くの高校生・青年に結集をよびかけ、福岡での全高・全青の成功をかちとろう。
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