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差別に満ちた社会の変革に向け、部落解放文学賞に応募しよう

「解放新聞」(2025.08.25-3148)

 全国水平社創立100周年をへて、われわれは新たな歩みをはじめた。今年は部落解放同盟に改称して70年、「同対審答申」から60年、「部落地名総鑑」事件が発覚して50年になる。いろいろな意味で節目の年である。

 7月に第51回表彰式をおこなった部落解放文学賞は、昨年50周年を迎えた。

 50年という歴史のなかで、各部門に多くの作品が寄せられた。賞を受けたことや、受賞作品の内容が、多くの人々に生きる力と部落解放運動への自覚と任務をさらに強く根づかせてきた。近年、労働者文学などの文学賞が減少傾向にあるなかで、平和と反差別を標榜する部落解放文学賞の意義は大きいものがある。

 とくに識字部門では、文字を書けない人々が識字運動と出会い、文字を一つ一つ獲得し、自分の半生を語ってきた。そうして生み出された作品が、差別の醜さやひどさを、差別に抗う姿を、文字を取り戻しつづるよろこびを、その生きざまであきらかにしてきた。ほかの誰にも語ることができないこれらの作品が、部落解放文学賞を意味あるものにしてきた。

 今年は戦後80年でもある。昨年、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞した。本当にようやく、である。被爆し、また、家族を目の前で亡くし、その心身の傷は80年を迎える今日もなお癒えないものであること、そうした苦しみのなか、世界唯一の戦争被爆国の国民であるという思いで運動を続けてこられたことについて、被爆者だけの問題とせず、私たちは深い連帯の思いをもって語りついでいかなければならない。

 しかし現在、当時の戦争への反省や人類の平和への願いを無視するかのように、大規模な紛争が絶えない現実がある。そのうえ「自国ファースト」や「日本人ファースト」などという手前勝手な考え方がメディアに流されていることに空恐ろしささえ感じられる。

 1974年に反差別と人権確立への貢献をめざして創設し、半世紀の歴史をもつ部落解放文学賞は、こうした潮流に大きな波紋を投げかけるものでありたい。

 部落差別をはじめあらゆる差別の撤廃に向けて、反戦・平和と反差別・人権確立の立場から創作に励む人々がめざしてきた部落解放文学賞の重要性はますます高まっている。

 そして「水平社宣言」の崇高な精神のもと脈々と続いてきた識字の営みや、光の当たらない場所で培われてきた反差別の思いをさまざまな形で残してきたことは、ほかに類を見ない素晴らしいとりくみであるといえる。

 差別と向き合った足跡を文字にすること。部落解放運動をとおしてみずからをふり返り、みずからの生きざまを問い、差別に満ちた社会を変革すること。こうした部落解放文学賞の姿を訴えたい。

 ひとりでも多くの方々の、それぞれの苦しみやよろこび、人権・平和への思いや願いをつづった作品の応募を期待したい。

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