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10・31狭山市民集会に結集し、狭山第4次再審闘争に勝利しよう

「解放新聞」(2025.10.15-3153)

 早いもので、3月11日に石川一雄さんが死去して半年が経った。狭山再審闘争は、請求人である石川一雄さんが亡くなったために第3次再審請求審そのものが終了してしまったが、妻の石川早智子さんが請求人となって4月4日に第4次再審を請求し、東京高裁第4刑事部に係属されることになった。その第1回目の三者協議が6月10日ひらかれた。万年筆インク鑑定の証人尋問の採否が期待されたが、家令和典・裁判長が検察側に弁護団、検察双方に意見書などの提出を求めたため、採否は先に延ばされることになった。しかし、第3次再審で積みあげた数々の新証拠や意見書はそのまま生きており、第4次再審闘争は依然、鑑定人尋問をめぐって大きな山場にある。ひきつづき石川早智子さんを支えながら、鑑定人尋問の実施を求め、再審開始実現に向けた闘いの手を休めることなく支援運動をすすめよう。当面は新100万人署名運動のほか、全国各地で集会をひらき、世論を拡大しよう。また、10・31狭山事件の再審を求める市民集会に結集しよう。

 第1回三者協議には、家令裁判長と担当裁判官、東京高等検察庁の担当検察官、弁護団は、竹下政行・事務局長ほか7人の弁護人が出席した。三者協議では、裁判官が弁護団にたいし釈明を求めた。これは、第4次再審請求の申し立てを第3次再審で提出した膨大な主張を圧縮した形で提出したことによって、漏れたものが出たために求められたものである。これにたいして弁護団は、主張を補充する再審請求補充書と、論点ごとに新証拠を整理した一覧表を6月27日と7月11日に提出した。これによって弁護団は、裁判所の請求にすべて対応した。

 いっぽう、裁判官は検察官にたいしても意見書の提出を求めた。検察官は、弁護団の第3次再審の主張と新たな第4次再審請求の違いを確認する必要があるので、意見書提出は年度いっぱいかかるとのべた。これは、家令裁判長のもとでの判断を避けようとする検察側の引き延ばしであると考えられる。弁護団は、第4次再審請求は第3次再審請求と同一の主張、同一の証拠であってそのような時間がかかることはないはずであり、前倒しにして意見書を提出するよう要請し、次回の三者協議で意見書の提出について、あらためて裁判官が検察官に見通しを聞くことになった。

 三者協議では、このほか弁護団が第3次再審で積み残しになっていたスコップとタオルについて証拠開示勧告の申立書を提出し、検察側に証拠の開示を求めた。

 争点になっている万年筆インク鑑定などの証人尋問の採否は、弁護団、検察官双方の意見書提出のあとになるため、少しずれ込むことになったが、これまでの経過をふまえて裁判官が次回の三者協議で判断を示す可能性もあり、予断を許さない。中央本部は、万年筆インクに関する鑑定人尋問の実施が再審開始の鍵であるとの認識から、ひきつづき東京高裁・家令裁判長にたいして、鑑定人尋問を求める世論をさらに高めていくことをよびかける。また、第3次再審で積みあげた数々の証拠や意見書がそのまま生きていることから、ひきつづき11人の鑑定人尋問や新証拠の採用を求める世論の拡大を全国の支援者によびかけている。

 石川一雄さんの突然の死去によって裁判は第4次再審へと移ったが、われわれはつぎの基本方針を確認しながら狭山第4次再審闘争をつづけていこう。

 一つ目は、石川一雄さんの遺志を引き継いで無罪判決をかちとるまで闘いをつづけることである。残念ながら石川さんは亡くなってしまったが、石川さんが無実であること、狭山事件が警察のつくったえん罪事件であることに変わりはない。第3次再審では、万年筆のインク鑑定をはじめ、コンピュータによる筆跡鑑定など、開示された証拠をもとに数々の無実を証明する鑑定書や新証拠を提出してきたが、それらの新証拠を前面に押し出して、再審開始を実現し、無罪判決の日まで闘おう。

 二つ目は、部落にたいする不当な差別を糾弾する闘いとして狭山闘争を闘うことである。狭山闘争は、被差別部落にたいする予断と偏見のなかでつくられたえん罪事件であり、部落差別を糾弾する闘いである。狭山闘争は、もちろん犯人の汚名を着せられた石川一雄さんのえん罪を晴らす闘いであるが、石川一雄さん一人だけの闘いではなく、全国6千部落300万人に着せられた濡れ衣を晴らす闘いである。また、部落に向けられた差別を糾弾し、部落民の名誉と権利を取り戻す闘いである。この狭山闘争の原点を確認して闘いをつづけていこう。

 三つ目は、えん罪をなくす闘いとして、えん罪で苦しんでいる人たちと広く連帯して闘っていこう。昨年、袴田事件の袴田巖さんが58年ぶりに再審裁判によって無罪をかちとった。しかし、いまもえん罪で苦しんでいる人がたくさんいる。やってもいない事件の犯人にされ、長い間牢獄で過ごさなければならない無念な気持ちを考えたとき、えん罪をなくすことは、日本の大きな課題である。えん罪は人間としての名誉だけではなく、人生そのものを奪うもっともひどい人権蹂躙(じゅうりん)であり、人権侵害である。62年にわたって狭山事件を闘ってきたわれわれは、もうこれ以上、えん罪で苦しむ人が出ないように、すべてのえん罪被害者と連携して、えん罪をなくすための運動をすすめていこう。えん罪をなくすために取り調べの可視化、代用監獄廃止や証拠開示、再審手続きの整備など、「再審法」改正を中心に司法の民主化を求める運動をすすめていこう。

 狭山第4次再審の闘いは、「再審法」改正とセットで闘うことが重要である。仮に再審開始が実現できても、検察が不服申し立てをおこなえば相当の期間引き延ばされてしまい、そのためにさらに5年、10年の時間を費やさなければならなくなる。袴田事件では、再審開始決定から実際に再審がおこなわれるまで10年かかっている。そのことを考えれば、「再審法」改正は急務であり、狭山第4次再審は「再審法」改正とセットの闘いとしてすすめることが大事だ。

 「再審法」改正では、昨年、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(会長:柴山昌彦・衆議院議員(自民党))が結成され、今年3月の議連総会では、「刑事訴訟法」改正案の要綱を了承し、通常国会での可決成立をめざす方針を各党がそれぞれ確認することになった。しかし、自民党、公明党、維新の会が党内手続きをすすめなかったために改正は実現せず、野党6党(立憲、国民、社民、共産、れいわ、参政)が議連法案を衆議院に提出し、継続審議となった。日弁連は、6月3日に議員立法による「再審法」改正の早期実現を求める市民集会をひらき、石川早智子さんも参加して一日も早い「再審法」改正を訴えた。現在、「再審法」改正を求める意見書が25道府県議会、15政令都市を含む754議会で採択されている。臨時国会での「再審法」改正に向けて、地方議会による「再審法」改正を求める意見書の議会決議と首長の賛同表明などにとりくもう。

 中央本部と狭山事件の再審を求める市民の会は、10月31日、東京・芝公園で「狭山事件の再審を求める市民集会」をひらく。この市民集会に全国から参加しよう。また、中央集会にあわせて、全国各地で集会や学習会にとりくもう。集会では、金聖雄・監督による石川一雄さん追悼のショートムービーや一人芝居、神田香織さんの講談などを活用しよう。また、「第4次再審勝利!新100万人署名」を、当面10・31までに50万筆を目標にとりくもう。

 石川一雄さんが亡くなって半年が過ぎたが、石川一雄さんの遺志を引き継ぎ、狭山事件の再審開始をかちとって、無罪判決を石川さんの霊前に報告できるよう、全国の支援者と連帯して運動をすすめていこう。

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