
「解放新聞」(2026.1.15-3162)
本日、さいたま地裁第2民事部(関根規夫裁判長)は「部落探訪」削除裁判の判決を言い渡した。「部落探訪」裁判とは、「示現舎」を名乗る川崎市の出版社代表(46才)が「部落探訪」(その後、「曲輪クエスト」に変更)と称して2016年から全国の被差別部落の様子を撮影した写真や動画をインターネットに掲載したことについて、部落解放同盟埼玉県連と熊谷市の支部長が削除を求めたもので、2023年12月6日にさいたま地裁に提訴していた。被告は、2025年11月末までに全国31都府県の432カ所の被差別部落を撮影した写真・動画つきの記事をインターネット上に投稿、埼玉県内では、提訴当時、14市町の28カ所の被差別部落の記事を投稿していた。部落解放同盟埼玉県連と同支部長は、被差別部落を特定した上で、画像は個人住宅の表札や墓石の墓誌銘などを撮影し、ことさら被差別部落が「特別な地域」であるような記事を書き込んでおり、被差別部落に対する差別意識を助長拡散するとして削除を求めた。
裁判で被告は、「画像は単なる街の風景を映したもので、被害は出ていない」、「被差別部落の所在地の記事は、解放同盟の機関紙や出版物にも出ている」「被差別部落の研究のための撮影で、研究の自由に対する弾圧だ」などと主張し、訴えられた以降も埼玉県内の被差別部落の撮影を続け、2025年12月までに9市13カ所を追加投稿した。なお、「部落探訪」に対しては、24年1月に同新潟県連が、同年7月に大阪府連が削除を求めた裁判(大阪は23年11月に仮処分申立て)を起こしており、現在審理が続いている。
12月17日のさいたま地裁の判決は、①「部落探訪」に掲載された28カ所すべての記事の削除を命じ、②ウェブサイトへの掲載、書籍の出版、出版物への掲載、放送、上演、戯曲、映画化等の一切の方法による公表を禁じた。また、③個人原告の支部長に11万円の損害賠償を命じた。ただし、④部落解放同盟埼玉県連の業務遂行権の侵害は認めなかった。
判決は、まず「原告の不当な差別を受けることなく平穏な生活を送ることができる人格的な利益が侵害された」と権利侵害を認めた。また、記事の公表に対しては、「被告の行為は、差別意識につながるような新たな手掛かりをつくり出す行為である」と指摘し、「差別意識を増幅させ、差別行為を助長させる」ときびしく弾劾した。
記事の削除の範囲については、インターネットの特性として「ひとつの記事を閲覧することを出発点として関連記事を検索することは可能かつ容易」であり、「閲覧者が芋づる式に本件各記事を閲覧する誘因」も大きく、「同和地区の記事を網羅的に閲覧することを薦める記載」があるので、削除および公表する範囲は、「実効性を確保する観点から……本件各記事の全てについて認めるのが相当である」と、原告が削除を求めた埼玉県内の28カ所すべての削除を命じた。
この裁判のもっとも大きな争点は、部落解放同盟埼玉県連が被害にあっている地域の代表として認められるかどうか、また、個人原告の熊谷の支部長が、「部落探訪」にさらされたほかの27カ所についても差止めることができるのかどうかであった。この点、今回の裁判に先立って闘われた「全国部落調査・復刻版」差止め裁判では、東京地裁も高裁も団体として部落解放同盟の権利侵害を認めず、全国の都府県のすべての差止めは認めなかったため、今回の判決が注目されていた。さいたま地裁は、団体としての解放同盟の権利侵害を認めなかったものの、個人原告である熊谷の支部長を基点にして、すべての地域の動画の削除を命じた。その論理は、インターネットの特性から、「部落探訪」のどれかを検索すれば、ほぼすべての動画が「芋づる式」に出てくるので、見る人間が次々と他の動画を見るおそれが強く、個人原告の権利侵害を守るためには、県内すべての動画を削除する必要があるというものであった。この点については、それならば全国すべての動画を消すべきではないかという意見もあるが、削除を求めたのが埼玉県内の動画である以上、やむを得ないと言わざるを得ない。
いずれにしてもさいたま地裁は、示現舎の行為は、「原告の不当な差別を受けることなく平穏な生活を送ることができる人格的な利益が侵害された」と、権利侵害を認めたうえで、被告の行為を「差別意識を増幅させ、差別行為を助長させる」ときびしく弾劾し、すべての動画の削除を命じた。これは、「全国部落調査復刻版」差止め裁判に始まる、8年にわたる示現舎との闘いの成果であり、部落解放運動の大きな成果である。今日まで、支援いただいた埼玉県内の支援者のみなさん、また被告の「探訪」を削除するために積極的に動いた関係市町村の支援のたまものである。あらためて感謝したい。
なお、埼玉県連は、12月3日に、追加で公表された地域の代表4支部9人が原告になって第2次訴訟を起こした。したがって、示現舎との闘いはしばらく続くが、今回の判決を踏まえて、これからも大阪訴訟、新潟訴訟のみなさんと連携し、また、全国の支援者と連帯して差別動画「部落探訪」を完全に削除するまで裁判闘争を続ける覚悟を表明して声明とする。
2025月12月17日
部落解放同盟埼玉県連合会
執行委員長 片岡明幸

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