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「解放新聞」(2026.2.25-3167)
昨年3月11日に石川一雄さんが死去してから早いもので、もうすぐ1年を迎える。部落解放同盟中央本部と埼玉県連は、石川さんを追悼し、事実調べ・再審開始をかちとるため、3月11日に狭山市民会館で「石川一雄さん一周忌・追悼集会」をひらく。全国から追悼集会に参加しよう。
狭山第4次再審闘争では、鑑定人尋問が大きな焦点になっているが、検察は、裁判官が求めた意見書の提出を年度末までかかると引き延ばしをはかり、家令裁判長の任期中の鑑定人尋問は困難な状況になった。しかし、第3次再審で積みあげた数々の新証拠や意見書はそのまま生きており、第4次再審闘争は依然、鑑定人尋問をめぐって大きな山場にある。ひきつづき手を休めることなく、鑑定人尋問の実施を求めて、早期の再審開始を実現しよう。
ところで再審制度の見直しを検討してきた法制審議会の部会は2月2日、改正案を賛成多数で採決し、同12日、法務省に答申した。焦点の証拠開示については検察が開示義務を負う範囲をこれまでよりも限定し、また再審開始決定にたいする検察の不服申し立て禁止はとうとう盛り込まなかった。
「再審法」改正については、超党派の国会議員連盟が、証拠開示の義務化と不服申し立ての禁止を内容とする議員立法案をまとめ、野党6党が25年6月に衆議院に法案を提出していたが、衆議院解散で廃案となった。今回の法制審の改正案は、この議員立法を真っ向から否定し、つぶすための「議員立法つぶし」法案であった。
そもそも「再審法」改正の議論は、袴田事件をきっかけに沸きあがったものである。袴田事件では、検察が証拠をねつ造したことが白日のもとに晒され、国民の多くが検察の悪質な不正行為を認識、えん罪・再審への関心が一気に高まった。それを背景に「再審法」改正が政治課題として浮上し、24年3月には「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(会長:柴山昌彦・衆議院議員、以下「再審議連」)が結成され、国会議員の過半数が加盟。25年6月に野党6党が議員立法として改正案を提出していた。
しかし、これに危機感を抱いた法務省・検察官僚は、このままでは、証拠開示の義務化や不服申し立ての禁止を謳った議員立法案が国会で可決してしまうかもしれないことをおそれ、巻き返しをはかった。それが法制審なのである。急きょ、法制審をひらき、再審議連による議員立法の法案提出より前に法務省案を提出するという悪知恵を働かせた。そこには証拠をねつ造したり、無理やり自白をさせるという、えん罪にたいする検察の反省も、えん罪被害者を救済しようという姿勢もまったく見られない。空き巣狙いで人家に入り込んだ泥棒が、家人に見とがめられて強盗になり、金品を脅し取るのを「居直り強盗」というが、法務省・検察官僚の所業は、まさに居直り強盗と同じだ。
「再審法」改正の大きな焦点の一つは捜査機関が持つ証拠をどこまで開示するかであった。現在は明文化された規定がなく、裁判官の判断にゆだねられている。そのために真実を解明するうえで重要な証拠が開示されることなく隠されたままになっていることがままあった。今回の法制審でもこの証拠開示が大きな議論となり、原則開示の方向へと向かうことが期待された。法制審改正案は、この証拠開示について、開示を義務付ける方向で一致したものの、その範囲を「再審請求理由に関連する証拠」に限定した。具体的には、裁判所は①再審請求理由との関連性の程度②再審開始の可否を判断するうえでの必要性の程度③開示による弊害の内容と程度――を考慮し、相当と認めるときは、検察に開示を命じなければならない、とした。しかし、この基準は、まったく具体性がなく、どうとでも解釈できてしまう危ない基準である。実際、なにをもって関連性がある、必要性があるというのかが不明確で、あるといえばある、ないといえばない、どうとでも解釈可能な危ない言葉だ。福井女子中学生殺人事件でも、無罪を証明する証拠が長い間「関連性がない」として未開示にされていた。
そもそも再審を求める側は、どのような証拠があるかさえ分からないのが現状だ。範囲が限定された場合、解釈次第で従来なら開示されたかもしれない証拠も隠される可能性がある。これでは現状より後退ではないか。
二つ目の焦点は、検察側の不服申し立てについてである。長い苦労の末、ようやく再審開始が決定されても、検察が不服を申し立てれば、再審裁判をひらくことができない。これがえん罪・再審の最大の問題であった。袴田事件では、2014年に静岡地裁で再審開始が決定されたが検察官が不服申し立てをおこなったために裁判は延びのびになった。当時、静岡地裁で再審開始決定が出て袴田さんが47年ぶりに釈放された姿をテレビで見て、無罪になってよかったと誤解した国民も多かったと思う。しかし、実際に再審裁判がはじまったのは、10年たった2023年からである。袴田さんは、検察の不服申し立てで10年間待たされたのである。このため「再審法」改正では、検察の不服申し立てを禁止することが一番強く求められた。再審議連も、禁止を内容とした法案を作成し、野党6党が法案を提出していた。しかし、法制審は、検察の不服申し立て禁止をまったく無視し、要綱案から削除した。地裁が再審開始を決定しても、検察はこれまでどおり、高裁への即時抗告や、最高裁への特別抗告ができることにした。
法務省は今回の「再審法」改正要綱案を、選挙後にひらかれる通常国会に法案として提出する意向だ。法務省にのせられた議員が、一挙に強行採決するおそれがないとはいえない。法務省のごり押しか、議員立法の採決か、これからひらかれる国会が「再審法」改正の正念場になる。現在、地方議会で採択されている「再審法」改正のための意見書は、すでに25道府県議会、15政令都市を含む754議会にのぼる。臨時国会での「再審法」改正に向けて、地方議会での「再審法」改正を求める意見書採択と首長による賛同表明などのとりくみをすすめよう。
石川一雄さんが亡くなって1年が経つが、石川さんが無実であり、狭山事件が警察のつくったえん罪事件であることに変わりはない。第3次再審では、万年筆のインク鑑定をはじめ、コンピュータによる筆跡鑑定など開示された証拠をもとに数々の無実を証明する鑑定書や新証拠を提出してきたが、それらの新証拠はいまも生きている。弁護団が積みあげてきた新証拠、鑑定人尋問を前面に押し出して、再審開始を実現し、無罪判決の日まで闘おう。「第4次再審勝利!新100万人署名」のとりくみをすすめ、石川一雄さんの追悼集会に参加しよう。

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