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「解放新聞」(2026.5.5-3174)
来る5月21日東京で、部落解放・人権政策確立要求第1次中央集会をひらく。本年は、差別解消三法ともいう「部落差別解消推進法」「障害者差別解消法」「ヘイトスピーチ解消法」が施行されて10年を迎える。「部落差別解消推進法」は12月16日に制定されており、本年12月の人権週間を記念するとともに〝「推進法」10年〟とあわせて、あらためて部落差別の撤廃と人権確立に向けた各地でのとりくみ強化を訴える。
まず、人権を語るうえで、重要なのは混沌(こんとん)とする世界情勢である。4年を迎えたウクライナ戦争からはじまり、イスラエルによるパレスチナ・ガザへのジェノサイドなど、戦争終結の目途(めど)は立っていない。加えてアメリカ・トランプ大統領によるベネズエラ大統領の拘束やイランの最高指導者ハメネイ師の殺害など、従来の常識では考えられない明白な国際法違反が勃発している。加えて「力による支配」がまかりとおり、世界的に民主主義が後退し、多様性の否定や移民排斥、右派政治勢力の台頭がすすんでいる。
また、GAFAM(ガーファム=グーグル、アマゾン、フェイスブック(現メタ)、アップル、マイクロソフト)やイーロン・マスクに象徴されるテクノ資本主義や選民思想、一部の者だけが生き残ればよいという終末ファシズムともいえる権威主義が世界を覆い、1%の強者と99%の弱者の格差はますます増大している。従来、〝右翼か左翼か〟、〝右か左か〟、〝保守か革新か〟といわれた左右対立から、富める者と貧しい者との上下対立に変化してきており、社会のありようが根本的に変化している世界に私たちはいま生きている。
一方、日本国内に目を向けると、歯止めのかからない物価高騰、2年連続で1万件を超える企業倒産、4割を占める非正規雇用、低賃金、1900万人が貧困ライン以下で生活を強いられている現状が横たわっている。先進国でも群を抜いて少子高齢化がすすむなか、単身世帯の爆発的な増加により、高齢者だけでなく多くの若者が社会から孤立し、将来に夢を持てず不安な日々を送っている。こうした市民生活の不安定さをよそに、日本の政治は混迷を深めている。今年1月の突然の衆議院解散総選挙では、自民党単独で衆議院の3分の2の議席を占有する「高市一強」ともいえる政治状況が生み出された。これらを、高市首相・自民党を支持した無党派層や若者が「右寄り」になった、「推し活」的だ、とは単純化できない。選択的夫婦別姓や性の多様性を認めるなど価値観としてはリベラルでありながら、投票先は〝自民党〟と書き込んだ多くの人たちが浮遊し、彷徨(さまよ)い、憂いているという社会情勢である。
今後、国論を二分する右寄りの政策が推進され、9条をはじめ憲法改悪への危惧も現実味を帯びている。
「再審法」改正や選択的夫婦別姓制度の実現、さらに1996年に地域改善対策協議会が政府に提言した人権委員会の設置についても、30年を経た今日なお、その実現は極めて困難な政治状況となっている。しかしながら、私たち部落解放同盟は、どのような政治状況であっても、部落差別撤廃に向けた人権の法制度実現を一歩でも前にすすめることをあきらめるわけにはいかない。今年で10年を迎える「部落差別解消推進法」の強化・改正に向け、各政党や国会への働きかけを強化していく決意で中央集会に結集しようではないか。
私たちはこの間、インターネット上での人権侵害―いわゆるSNS上の部落差別や人権侵害にたいして、法的に削除させることや、書き込みを制限するサイトブロッキングなどを国に求め、闘いを展開してきた。その成果として、「情報流通プラットフォーム対処法」(以下、「情プラ法」という)が昨年9月から本格的に運用されており、大手プラットフォーマー9事業者が総務省から指定され、9社にたいし、ガイドラインの策定や侵害情報専門員の配置などが義務化された。
しかし、課題も浮き彫りになっている。削除申請窓口のわかりやすさや、削除申請にたいして1週間での回答がなされるとの「情プラ法」の特徴が強調されてきたが、一向に削除された形跡は見当たらず、法律の実効性は乏しいというのが現状である。
「情プラ法」の課題を列挙すれば、①削除申請の方法が難解である②ネット上で被害を受けた被害者が、わざわざそのプラットフォーマーのアカウントを取得しないと受け付けられない③「情プラ法」にもとづいて受け付けられたものなのかが不明のまま④個人ユーザーによる削除申請が難解なため、第三者(代理人)による削除申請を受け付けると、どの業者も門戸を広げてはいるものの、その範囲が不明確、という点などが「情プラ法」改善のポイントといえる。
自分に降りかかる差別や人権侵害は、自分の責任で対処すべきことなのであろうか。社会がこうした被害にたいして警告を発し、被害者を保護し、加害者が特定されるなら、一定の罰則をともなう法律が存在してもよいだろう。この発想にこそ、国内人権機関の整備、包括的差別禁止の法整備という私たちの目標が展望されている。
この目標をたどる過程で、SNS上の人権侵害にたいして、あまりにも法が不備であり、あいつぐ誹謗中傷や人権侵害、被差別部落にたいするアウティングなどが、止まるところを知らない勢いで増加の一途をたどってきた。SNS上の誹謗中傷にたいして、「プロバイダ責任制限法」ではあまりにも不十分であることから、法律そのものが「情プラ法」にバージョンアップされてきたのである。
私たちは当面、ネット上の部落差別や人権侵害を許さない立場で、「情プラ法」の実効性ある法的運用に向け、強化・改正を求めていく。同時に、「部落差別解消推進法」制定から10年という歳月は、人権問題を大きく変えた10年でもある。その一つが、情報化の進展にともなうSNS上の人権侵害である。10年前に比べ爆発的に増大し、悪質化・陰湿化していることは紛れもない事実であり、差別助長行為は平穏な生活を脅かすまでに至っている。他方、自治体でも、こうしたネット上の人権侵害を許さないという対応が増えつづけ、「部落差別撤廃条例」や「人権尊重のまちづくり条例」の制定、さらには、ネット上の人権侵害に一定の規制を加える自治体まで出現してきており、差別の法的規制へのとりくみが、10年前とは比べものにならないほどの速度で広がりをみている。
つまりは、差別や人権侵害がネット上を中心に吹き荒れており、差別を本格的に法的に規制する必要性が高まってきている。さらには、自治体での人権条例の制定により、「審議会」が各地で設置され、何が差別、人権侵害なのかといった議論が積みあげられ、差別を法的に禁止するガイドラインが少なくとも10年前よりは飛躍的に蓄積されている。こうした現実から「部落差別解消推進法」制定10年を機に強化・改正を求める運動を提唱することが肝要である。
とくに「部落探訪」削除裁判をはじめとする各種裁判闘争の勝利はもとより、東京高裁が「差別されない権利」を認め、「人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有する」とまで踏み込んだ画期的な判決を最大限に活用し、この「差別されない権利」を「部落差別解消推進法」に盛り込ませるための世論形成にとりくむ運動の構築が急務である。
保守勢力が強まっている厳しい時代だが、普遍的な課題である差別撤廃と人権の確立という目標は揺るぎない。私たちの部落解放運動は前進あるのみである。そのための中央集会に、各地域での「部落差別撤廃条例」や「人権条例」制定への気運を持ち寄り、国内人権機関の設立や包括的差別禁止法制定への展望を示す中央集会としよう。全国からの結集をよびかける。

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