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新100万人署名と上映運動をすすめ、狭山再審をかちとろう

「解放新聞」(2026.8.5-3183)

 7月14日、狭山事件第4次再審請求の第5回三者協議で、弁護団によるプレゼンテーションがおこなわれた。プレゼンテーションは、法廷でパソコンをもちいて図や写真をモニターに表示しながら、東京高裁第4刑事部の前田巌・新裁判長、主任裁判官ら担当裁判官3人にたいし、狭山事件の第4次再審請求の全体についての説明をおこなうものだ。弁護団は、確定判決である東京高裁の有罪判決(1974年10月31日、寺尾正二・裁判長による無期懲役判決)がどのような証拠を根拠に石川一雄さんを有罪としたのかを示したうえで、第4次再審請求で提出した新証拠によって有罪判決に疑問が生じており、再審(裁判のやり直し)を開始すべきかについて説明した。具体的には、自白(その核心部分である殺害方法、死体の逆さづりなどの自白)が、取調べで誘導された虚偽自白であること、万年筆、鞄、脅迫状(コンピュータ筆跡鑑定、識字能力鑑定)、スコップ、足跡、目撃証言、音声証言、血液型などの論点について、どのような新証拠を提出してきたか、取調べ録音テープなど開示された証拠資料によって、いかに有罪判決の誤りと石川さんの無実が明らかになったか、検察官意見書への反論を前田裁判長ら裁判官に説明した。

 弁護団は、無念のうちに急逝した石川一雄さんの遺志を継いで、昨年4月4日に石川早智子さんが申し立てた第4次再審請求で、278点の新証拠を提出し、有罪判決の誤りを明らかにして再審開始を求めてきた。事実取調請求書を提出し、鑑定人11人の証人尋問、とりわけ、筆跡、万年筆、自白について鑑定人4人の証人尋問をまず実施するよう求めている。

 これにたいして検察官は、今年3月末に、筆跡・脅迫状をはじめ、血液型、足跡、スコップ、目撃証言、鞄、万年筆、自白など、弁護団が提出した新証拠、主張すべてにたいして「反論」をのべたうえで、鑑定人らの証人尋問の必要性はなく、すみやかに再審請求を棄却すべきという不当な意見書を提出している。弁護団は、今後、検察官意見書にたいして全面的に反論し、証人尋問の実施、再審開始を東京高裁第4刑事部に求めていくことにしている。次回の三者協議は9月上旬にひらかれ、検察官がプレゼンテーションをおこなうことになった。

 私たちは、石川早智子さんと弁護団による第4次再審を全力で支援し、狭山事件の再審開始、石川一雄さんの無罪判決を実現し、なんとしても石川一雄さんのえん罪を晴らさなければならない。前田裁判長のもとで鑑定人の証人尋問が実施され、再審開始が実現するよう、各地で、狭山第4次再審闘争勝利に向けた集会や街頭宣伝にとりくみ、世論を大きくしていこう。石川一雄さんがえん罪を訴えて63年、最初の再審請求から49年も経過するが、求め続けた証人尋問などの事実調べは一度もおこなわれていない。証人尋問・再審開始を求める市民の声を東京高裁第4刑事部に届けるために、新100万人署名運動を全力ですすめよう。

 7月17日、参議院本会議で、「刑事訴訟法」の一部改正についての政府提出法案が可決、成立した。

 この法律案は、いわゆる「再審法(再審の手続きを規定する刑事訴訟法の一部)」改正について、法制審議会の答申にもとづき法務省が作成した法律案にたいして、自民党内の事前審査で批判が続出し、再審開始決定にたいする検察官の不服申し立て(抗告)を原則禁止することが条文(本則)に入れられるなどの修正がなされ、閣議決定されて政府提出法案として国会に提出されたものである。

 そもそも法制審の答申については、再審開始にたいする検察官の抗告が維持されているだけでなく、再審請求人・弁護人への証拠開示が十分に保障されていないことや、証拠の目的外使用の禁止、再審の門前払いとも言うべき事前審査手続きが新たに加えられたことなど、再審手続きの改悪になるとして、えん罪被害者、当事者はもとより、日本弁護士連合会、元裁判官、刑事法研究者から問題点の指摘、強い批判がなされた。政府案は、自民党内の審査で法務省案が修正され、再審開始決定にたいする検察官の抗告を原則禁止するとの規定が本則に盛り込まれた点で、大きな改正として評価できるが、その他の問題点を残したまま閣法として提出され、国会で可決・成立した。

 一方で、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が昨年3月にまとめた「再審法」改正法案は、検察官抗告の全面禁止(廃止)、再審請求人への直接かつ限定のない証拠開示命令の規定が明記されたものだ。この法案は昨年6月に野党6党で衆議院に提出されたが、審議入りされないまま、今年1月の衆議院解散で廃案になった。この超党派議連の法案も今国会で中道改革連合など野党3党によって再提出されていたが否決され、また、政府案の問題点について、参考人からの意見もふまえて、衆議院では中道改革連合と国民民主党から、参議院では立憲民主党、公明党から、検察官保管証拠の一覧表を再審請求人側へ開示する規定を加えることなど、政府案にたいする具体的な修正案も提出されたが否決された。国会請願署名は4か月あまりで15万筆を超え、えん罪被害者、当事者や私たちは議連法案の実現、政府案の修正を求めたが、実現しなかったことはきわめて残念である。

 政府案は、裁判所が「牽連性」「必要性」があると認めるときに裁判所へ証拠を提出するよう命じるという制度であり、再審請求人・弁護人への幅広い証拠開示を保証するものではない。裁判所が再審請求人・弁護人が求める証拠を請求人へ開示するよう命じる権限が条文に明記されていない。

 そして、検察官がどのような証拠を持っているのか再審請求人・弁護人がわかるようにするための証拠一覧表(証拠リスト)の提出・交付が認められていない。また、証拠の目的外使用禁止規定の新設など、証拠開示に関して多くの問題点を残している。再審開始決定にたいして検察官が抗告できる例外規定が設けられ、「検察官抗告の原則禁止」が骨抜きにされかねないとの懸念も払拭されていない。

 とりわけ、再審請求人にたいする幅広い証拠開示の保障は、現にえん罪を訴え再審を闘い、また再審を準備しているえん罪当事者・弁護人にとっては必要不可欠の課題である。再審は、誤判から無実の人を救うという人権の制度であり、証拠開示はその生命線である。狭山事件では、検察官による証拠開示が遅れ、第3次再審請求だけでも19年もの長い時間がかかり、石川一雄さんはえん罪が晴れぬまま無念のうちに旅立ったことを忘れてはならない。「再審法」改正を訴えつづけていた石川一雄さんの遺志を継いで第4次再審を闘う石川早智子さんも国会前で訴え、衆参の法務委員会を傍聴し、国会請願デモで国会議員に直接、真の「再審法」改正を訴えた。私たちは、今回成立した法案の問題点を訴え、狭山第4次再審勝利に向けたとりくみと結びつけて、真にえん罪被害者を確実に、迅速に救済するための「再審法」改正を国会に求めて、さらに運動をすすめていこう。

 映画『SAYAMA みえない手錠をはずすまで』(2013年)の金聖雄・監督の新作映画『うそがほんとに ほんとがうそに』が完成した。この映画は、狭山事件の石川一雄さん、早智子さん、袴田事件の袴田巖さん、ひで子さんを主人公に、これまで撮影された映像を再構築したドキュメンタリー映画だ。劇場公開もされるが各地での自主上映会をよびかけている。

 証人尋問の実施・再審開始実現に向けて、狭山第4次再審闘争、新100万人署名運動と結びつけ、各地で上映運動をすすめよう。

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