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<月刊「狭山差別裁判」293号/1998年5月>

甲山事件の検察官控訴に断固抗議する!
司法反動許さず全証拠開示・事実調べをかちとろう!

 神戸地裁が甲山事件の差戻し審で無罪判決をおこなった。山田悦子さんは20年にわたる裁判で2度の無罪判決を受けたのである。神戸地裁判決は園児の目撃証言や自白の信用性など検察側の主張した有罪証拠をすべて否定した。山田さん自身の無実の叫び、弁護団の活動と支援の闘いが一つになって完全無罪判決がかちとられたのである。
 山田さんが長期のえん罪裁判を強いられたことを考えれば、警察の捜査や虚偽自白を導いた代用監獄での不当な取り調べについて真剣な反省こそ必要であった。そもそも、証拠もなく不当逮捕し、不起訴となったにもかかわらず再逮捕-起訴し、長期にわたる人権侵害をひきおこした検察・警察の責任は重大である。ところが、誤りを反省し、謝罪すべきはずの検察官は無罪判決にたいして控訴した。驚くべき暴挙であり、わたしたちは断固これに抗議しなければならない。一審無罪判決にたいして高裁は差戻したが、神戸地裁はさらに事実審理をおこない、2度の無罪判決をおこなったのである。これにたいして再び控訴することはだれが考えても、メンツのためだけの控訴、上訴権の濫用いがいの何者でもない。わたしたちは、このような司法反動を許さず、気をひきしめて狭山闘争の強化をはかり、ともにえん罪を晴らすまで連帯して闘っていきたい。
 狭山事件で証拠開示を拒否しつづけているのも検察官である。東京高検はまだ開示していない証拠がたくさんあることを認めながら、証拠のリストさえ弁護団に見せるのを拒否している。
 わたしたちは、権力をふりかざすこのような検察の不当な実態を見据え、もっと国民の人権という観点、国際的な人権基準から批判していかなくてはならない。先日、法学者や狭山弁護団の呼びかけで来日されたスティーブン・アーロンソン弁護士は、カナダにおいて再審で無罪となったえん罪事件であるマーシャル事件の教訓について講演された。マーシャル事件では、再審無罪判決後に国民世論に動かされて州政府がえん罪の原因を究明する調査委員会を設けて報告書をまとめ、その後、検察官の証拠開示を義務づけることが制度化されるなど司法改革実現に結びついたという。やはり重要なのは国民世論である。わたしたちも、今回の甲山事件の不当な控訴や狭山事件における証拠不開示を批判し、公平・公正な司法を求めるさらに大きな国民世論を検察や裁判所にぶつけ、えん罪をなくし、証拠開示をかちとるための具体的な運動にしていかなくてはならない。狭山事件の真相や証拠開示の問題、えん罪や司法反動の問題を市民に訴え、運動のすそ野をさらに広げるとりくみがだいじである。そのような観点からも「狭山事件を考える住民の会」づくりをもっと全国に広げていきたい。
この5月23日は、石川一雄さんが不当な差別的見込み捜査のなかで、別件逮捕されて35年をむかえる大きな節目である。5月22日には東京・日比谷野外音楽堂での中央集会を開催する。中央集会の成功をかちとるとともに、各地で決起集会や学習会、教宣活動を実施し、闘いを強化しよう!
えん罪事件を真剣に受け止め、その原因を究明する委員会設置を求める国民世論がもりあがった。それによって政府は費用のかかかる委員会の設置を決定し、さらにさまざまな当事者の団体、個人の参加する公開の調査委員会をおこなったのである。その結果まとめられた報告書が最高裁によって証拠開示を義務づける判例で引用された。また、えん罪の原因の一つがネイティブ・カナディアンにたいする差別であることを具体的に先住民の法というかたちで司法改革に結びつけた。重要なことは、えん罪を生み出したのも国民であり、それを真摯にうけとめマーシャル事件の真相とその教訓をより多くの市民に広げよう。


月刊狭山差別裁判題字

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