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<月刊「狭山差別裁判」295号/1998年7月>

東京高検は弁護団と具体的に協議し証拠リストなどの証拠開示をおこなえ!

 この間も、大阪市内、福岡県田川市で「住民の会」が結成され、全国で三十一の地域で市民自身による運動が展開されている。こうした住民の会の動きを全国に拡げることがだいじである。
 狭山弁護団は、この間も補充書を提出し、さる六月二十三日にも高木裁判長に面会し、事実調べを強く求めた。とくに、昨年十月に石川一雄さんが高木裁判長に面会した際に訴えた、虚偽の自白にいたる経緯、三十五年経ち、仮出獄した今もえん罪を何としても晴らしたいという思い、そこで訴えられた石川さんの主張が真実の叫びであることをあきらかにするものである。弁護団は、東京高裁が事実調べにはいり、再審を開始するまで、ねばりづよく取り組みをつづけることにしている。われわれも、さらに各地で「住民の会」をつくるとともに、首長署名など幅広く署名運動を展開し、事実調べを求める世論をさらに大きくしなければならない。中央本部では、当面を最大の正念場として、地域におけるすそ野を広げる取り組みとともに、住民の会の全国的な交流・学習会や東京高裁・東京高検
にたいする波状的な要請行動をはじめとして、あらゆる工夫をこらした取り組みを展開することを確認している。今後の呼びかけにおうじて、地域-中央を通した積極的な取り組みをすすめよう!
 その一環として、新しい狭山ビデオ「無実の叫び 冤罪・狭山事件35年」を制作し、活用を呼びかけている。ビデオ上映と石川一雄さんの訴えをあわせて各地の学習会や真相報告会で活用し、「住民の会」結成に結びつけていこう!
民主党の北村哲男・衆議院議員の法務委員会での質疑をふまえて、証拠開示の闘いの強化をはかることも重要である。弁護団も担当検察官との折衝など取り組みの強化を確認している。
 要請行動に際して東京高検前でのビラ配布もこの六月から開始した。各地でも、マーシャル事件とカナダの証拠開示確立の経過や国際人権B規約などの学習を深め、証拠開示要求署名などの取り組みをすすめよう!
 一九八四年に再審で無罪となった松山事件では、第二次再審請求で、全六札という多数の証拠が開示された。そのなかには、でっちあげられた斉藤幸夫さんが逮捕後入れられた警察留置場の同房者の供述がふくまれていた。この同房者は、斉藤さんに犯行を認める虚偽の自白をさせるための役割をもったた。そのことを示す供述が開示された証拠のなかにあったのである。
 再審開始決定は、この点について、「自白の動機、経緯を、(証拠開示された)裁判不提出記録中の新証拠であるTの調書を加えて検討した結果、請求人が同房者の示唆を受けて、虚偽の自白を誘発しやすい状況のもとで自白した疑いが濃くなった。この点は自白の真実性に重大な影響をおよぼす」(要旨)とした。
再審請求において、このように、証拠開示が確定判決に合理的疑いを生じさせる可能性を否定することはできない。証拠の前面開示は不可欠なのである。再審の制度は再審請求する側の利益のためにある。
 そうでなければあきらかに不公平と言わねばならない。一方で検察官は手持ちのすべての証拠を見ているのである。
狭山弁護団は、今後、東京高検の担当検察官にさらに証拠開示をせまって折衝することにしている。
 えん罪事件を真剣に受け止め、その原因を究明する委員会設置を求める国民世論がもりあがった。それによって政府は費用のかかかる委員会の設置を決定し、さらにさまざまな当事者の団体、個人の参加する公開の調査委員会をおこなったのである。その結果まとめられた報告書が最高裁によって証拠開示を義務づける判例で引用された。また、えん罪の原因の一つがネイティブ・カナディアンにたいする差別であることを具体的に先住民の法というかたちで司法改革に結びつけた。重要なことは、えん罪を生み出したのも国民であり、それを真摯にうけとめマーシャル事件の真相とその教訓をより多くの市民に広げよう。


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