pagetop
 
 

 

 

 

<月刊「狭山差別裁判」296号/1998年8月>

全証拠開示・事実調べ-再審開始までさらに世論を広げ、徹底して闘いをすすめよう!

 第二次再審請求が一九八六年八月二十一日に提出されてまる十二年になる。第二次再審請求のこの十二年間で提出された署名は、再審開始を求める署名が百三十万人、各界の人たちの呼びかけによる事実調べを求める新署名も百二十万人に達する。法学者や文化人、宗教者の署名、労働組合などの団体署名も多数出され、とくに、この間提出された全国の自治体首長の署名は六百人近くになる。こうした国民世論に広がりのなかで、石川一雄さんの仮出獄も実現し、さらに昨年には、石川さんが高木裁判長に面会するということも実現したのである。また、各地で「狭山事件を考える住民の会」が結成され、高木裁判長の
地元の久留米市では高木裁判長の同級生も市民の会に参加して市民のなかに狭山事件の公正な裁判を求める声が広がっている。こうした運動の前進を積み重ねてきたこの第二次再審で何としても事実調べを実現しなければならない。とくに、石川さんの訴えを直接聞き、弁護団が十数回にわたって折衝を積み重ねてきた現在の高木裁判長になんとしても事実調べの実施を強く求めていくべきである。そのためにも、いまこそ全力をあげた闘いが必要なのである。
 弁護団や石川さん本人の訴えが真実であり、有罪判決に市民常識として合理的な疑問があるからこそ、こうして市民のなかに公正裁判を求める声が広がってきたのである。高木裁判長はそのことを真摯に受けとめることを求めたい。
 高木裁判長は、筆跡等の鑑定人尋問をおこない、寺尾判決の言う「客観的証拠」を厳密に評価しなおすべきである。それと同時に、石川さん本人尋問もふくむ事実調べによって、自白の信用性を再検討すべきである。その際につねに、「疑わしきは被告人の利益に」という鉄則にしたがって評価するとは言うまでもないことである。狭山弁護団は、六月の高木裁判長との面会でも、事実調べを強く求めた。これまでの再審請求の審理でも、裁判所は証人尋問や検証を実施しており、狭山事件の再審請求でも、東京高裁・高木裁判長は、鑑定人尋問にしても本人尋問にしても容易に実施できるはずである。
 弁護団は、さらに新証拠や補充書の提出など、事実調べ-再審開始まで徹底して闘いをすすめている。わたしたちも、さらに大きな世論で東京高裁を包囲し、高木裁判長に積極的に事実調べを求めて、積極的に闘いを展開しなければならない。中央本部では、こうした弁護団の取り組みと連携して、石川さんの家のお勝手の再現もおこなう予定である。また、八月末には、住民の会の全国交流会を開催し、それぞれの地域の工夫をこらした取り組みの交流、意見交換をおこなうとともに、首長署名や要請ハガキ運動、連続要請行動、証拠開示にむけた取り組みなど、この秋以降の全力をあげた取り組みを確認する予定であ
る。住民の会結成の準備をすすめている地域もふくめて、ぜひ参加し、学習と交流を深めよう。
 全証拠開示、事実調べ-再審開始にむけて、全国の仲間の力を結集し、石川さん、弁護団とともに全力で闘おう!
 弁護団が提出した補充書のなかでも強調されているように、狭山事件では、筆跡などの鑑定が客観的な証拠として有罪の根拠とされた。しかし、これら警察の手によってなされた鑑定はいずれも、科学的に検討すれば、ひじょうにずさんなものであることはあきらかであった。証拠のどれ一つとして石川さんの指紋もなく、あいまいな証拠、ずさんな鑑定という弱い証拠しかなかったからこそ、寺尾判決は筆跡鑑定を決め手と言わざるをえなかったのである。そして、ずさんな筆跡鑑定をおぎなうために、「『りぼん』を手本に脅迫状を書いた」という、これまて不自然で変遷の多い自白で、これらの弱い証拠をささえざ
るをえなかったのである。寺尾判決のそもそもの弱さははっきりしている。
 弁護団は、これら筆跡鑑定等の有罪の客観的証拠とされたものが、弁護団提出の反論の鑑定によって完全にくずれていることをあきらかにしたうえで、自白そのものを再評価する必要を強調する。そのときに、個々の自白の矛盾・疑問をバラバラにとりあげて「こうも言えなくはない」という言い方でごまかすことは許されない。松山事件の再審開始決定など再審の判例が指摘するように、自白は関連を持つものとして見なければならないからである。さらに、自白のくいちがいを石川さんがウソをついているという論法でごまかすことも許されない。浜田寿美男さんが意見書で詳細に指摘しているように、石川さんにと
ってウソをつく必要のないことだからである。自白の矛盾を被告がウソをついているというかたちでごまかさねばならなかったこともまた寺尾判決の弱さのあらわれなのである。

 狭山事件では、筆跡鑑定や法医鑑定など多くの鑑定が出され、重要な争点となっている。これら鑑定人の尋問、石川さん本人尋問などの事実調べは不可欠である。再審請求人の意見を十分に聞き、全証拠を総合的に評価するという再審の理念からしても事実調べは当然のことである。
 えん罪事件を真剣に受け止め、その原因を究明する委員会設置を求める国民世論がもりあがった。それによって政府は費用のかかかる委員会の設置を決定し、さらにさまざまな当事者の団体、個人の参加する公開の調査委員会をおこなったのである。その結果まとめられた報告書が最高裁によって証拠開示を義務づける判例で引用された。また、えん罪の原因の一つがネイティブ・カナディアンにたいする差別であることを具体的に先住民の法というかたちで司法改革に結びつけた。重要なことは、えん罪を生み出したのも国民であり、それを真摯にうけとめマーシャル事件の真相とその教訓をより多くの市民に広げよう 。


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円