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<月刊「狭山差別裁判」329号/2001年5月>

証拠隠し許さぬ市民の声を大きくしよう
狭山再審と司法改革を結びつけて闘おう

 四月一日付で、また東京高検の担当検事が交代した。これで、會田検事以来二年あまりの間に八人目である。積み上げれば二メートル以上という未開示資料を手元に持ちながら、弁護団の再三にわたる証拠開示請求にたいして、まったく開示におうじないままあいつぐ担当検事の交代は不当、不誠実な姿勢といわねばならない。弁護団は二月十四日、東京高裁に刑事訴訟法二七九条に基づく照会請求書を提出、検察官の持つ証拠リストを提出させるよう裁判所に求めた。これは、「裁判所は、検察官、被告人もしくは弁護人の請求により又は職権で、公務所もしくは公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」という刑事訴訟法二七九条の規定にもとづいて、検察官が持つ証拠の標目(証拠リスト)の内容について報告を求めるものである。弁護側の請求権として法律上の根拠があるというだけでなく、そもそも、弁護側が、検察官手持ち証拠がどんなものかさえ知り得ないということはだれが考えてもおかしいことであり、弁護団の請求は当然といわねばならない。
 とくに、新証拠の提出を再審開始の要件として弁護側に求めている再審請求の手続きにおいて、検察官が手元に持っている未開示の証拠資料がどんな中味なのか、その一覧表を見たいと弁護側が主張するのは、だれが考えても当然であろう。むしろ、証拠リストの開示さえこばんでいる検察官に不信、批判を抱くのが市民の常識的な感覚だ。再審における検察官手持ち証拠の全面的な開示は当然なのである。中味も知らせず、プライバシーに関わるから開示できないというのは検察官の一方的な言い方でしかない。抽象的にプライバシーを持ち出して証拠リストの開示を拒否することは断じて許されない。
 国連・規約人権委員会の勧告や諸外国の制度、手続きに見られるように、証拠開示は国際的な流れである。さらに、狭山事件に関わる証拠開示、証拠リストの開示を東京高検、東京高裁に強く求め、要請ハガキなどの取り組みをすすめよう。また、証拠開示のルール化を検討している司法制度改革審議会は六月に最終答申を出す。司法制度改革審議会にたして、誤判・えん罪防止の視点をもって、再審請求における全面証拠開示を弁護側の権利として確立するよう求める市民の声を集中しよう。
 狭山弁護団は、四月二十五日に異議審で七通目の新鑑定を東京高裁に提出した。証拠の主軸とされた脅迫状の疑問はますます大きくなっており、石川さんとの結びつきは完全に断たれているというべきである。脅迫状、足跡という確定判決を支えた証拠がくずれており、ただちに棄却決定を取り消し再審を開始すべきである。わたしたちは、新証拠をさらに多くの市民に知らせ、東京高裁第五刑事部・高橋裁判長に再審開始を求める声を集中しよう。
 異議審が二年を迎えようとし、情勢は緊迫してきている。部落差別のなかで石川さんが不当逮捕されて三十八年をむかえるこの五月には、中央集会を開催するとともに、狭山現地で住民の会の全国交流会をおこない、あわせて学習会、現地調査をおこなう。また、全国の住民の会の情報交換・交流を促進するために、住民の会のネットワーク化をすすめる予定である。さらに、各地で住民の会結成を 推進し、市民的な狭山再審の広がりをもっと作り出そう。

月刊狭山差別裁判題字

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