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<月刊「狭山差別裁判」332号/2001年8月>

棄却決定取り消し・再審開始を求めよう
東京高裁は弁護団の証拠リストの照会請求に応じよ

 狭山弁護団は、さる七月十七日、東京高裁第五刑事部の高橋省吾裁判長と面会し、齋藤保・指紋鑑定士などの鑑定人尋問を強くせまった。高橋裁判長は、検討中と述べるにとどまっており、予断を許さない状況である。高橋裁判長が判断の段階にはいっていることは間違いないと言わねばならず、今後も気をゆるめることはできない。とくに新鑑定によって、有罪証拠の主軸とされた脅迫状が石川さんとまったく無縁であることが明らかになっている。「中田江さく」という被害者の父親の名前が犯行日前に万年筆で書かれていることや犯行以前に書かれ消された文字があること、石川さんの指紋がなく逆に手袋痕があることなど脅迫状そのものが「物」として石川さんと結びつかないことがつぎつぎと明かになっていることを高橋裁判長は公正・公平に、そして、常識的な目で見なければならない。
 わたしたちが今やるべきことは、弁護団提出の八つの新鑑定が示す石川さんの無実と棄却決定の誤りをできるかぎり多くの市民に広げ、東京高裁第五刑事部の高橋省吾裁判長を包囲する大きな市民の声を作り出すことである。新鑑定をわかりやすく解説した新作ビデオ「無実の叫び2」やカラーリーフレットも好評であり、おおいに活用し、さらに学習・教宣活動を強化しよう。東京高裁、東京高検に対して要請ハガキをさらに送ろう。
 弁護団は先日の高橋裁判長との面会において、刑事訴訟法二七九条にもとづく照会請求(検察官手持ち証拠の内容報告、証拠リスト取り寄せ請求)についても強くせまったが、これについても検討中と答えるにとどまっている。弁護団は、検察官が裁判に出さなかったどんな証拠を手元に持っているのか、その内容の報告を求める、いいかえれば証拠リストを取り寄せることを求めているにすぎない。なぜ、それを高橋裁判長はすぐにおこなえないのかとだれもが思うのではないだろうか。さる七月二日には、狭山事件の再審を求める文化人の会を中心に、学者、文化人による狭山事件の証拠開示を求める意見広告が毎日新聞全国版に掲載され、これを支持するメールや手紙が多く届いているという。情報開示は国際的にも時代の流れであり、とくに再審請求において弁護側が検察官手持ちの未開示証拠へアクセスする権利を保障することはだれもが支持することであろう。
 東京高裁・高橋裁判長に弁護団の照会請求にただちに応じるよう強く要請しよう。
 先般出された司法制度改革審議会の最終意見書は、証拠開示の拡充とルール化、国民の司法参加などを提言したが、わたしたちが求めていたえん罪の教訓を生かすことや弁護側の権利としての証拠開示が明記されていない。愛媛県警につづいておきた埼玉県警による十八歳の少年の誤認逮捕・誤判事件に見られるような、えん罪が跡を断っていない実態やなぜ誤判が起きるのかの究明がふまえられていないことはきわめて残念である。「迅速な裁判」「裁判員制度」というだけでなく、そのためにも公正・公平な手続きの保障や、裁判官、検察官は言うにおよばず国民全体の人権教育の充実化などが同時に確立されなければならない。今後、国会での議論もふくめて立法化がすすめられるなかでさらに、わたしたち市民の声をつきつけていく必要がある。狭山闘争と結びつけて司法改革の取り組みをすすめることが今後一層重要であることを忘れてはならない。

月刊狭山差別裁判題字

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