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<月刊「狭山差別裁判」333号/2001年9月>

異議審最大の山場を全力で闘おう
えん罪を教訓にした司法改革を実現しよう

 弁護団は七月十七日に東京高裁第五刑事部の高橋省吾裁判長と面会し、鑑定人尋問と再審開始を強くせまったが、高橋裁判長は、検討中と述べるにとどまっている。狭山弁護団が六月四日に最終的な補充書を提出して三ヶ月になろうとしていることからしても、この秋が最大の山場と考えなければならない。弁護団は、この二年間に八通の新鑑定を提出、昨年には三次元スキャナを用いた足跡鑑定について再審段階でははじめて直接鑑定人から説明を聞いた。元鑑識課員の齋藤・指紋鑑定士による四通の鑑定は証拠の主軸とされた脅迫状が石川さんとまったく結びつかないことを明かにしており、とくに、脅迫状の封筒に書かれた被害者の父親の名前が犯行日前に書かれているという事実は決定的とも言える。弁護団は、こうした科学的な最先端の技術と鑑識のプロによる鑑定によって、東京高裁・高橋裁判長をおいつめていると言える。七月の緊急集会や意見広告で運動的にもせまっているが、高橋裁判長はまだ検討中と述べるだけで事実調べにはいろうとしておらず、予断を許さない状況である。事実調べ、再審開始を実現するためには、まだもっと大きな世論をつくりあげる必要がある。
 高橋裁判長はただちに、齋藤保さんをはじめとする鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきである。また、弁護団の刑事訴訟法二七九条にもとづく照会請求に応じて東京高検から証拠リストを取り寄せ、開示すべきである。最大の山場を迎えているいま、「無実の叫び」「無実の叫び2」といったビデオやカラーリーフレットなどを活用し、各地で緊急集会、真相報告集会を開き、街頭宣伝にとりくもう。さらに全国各地で住民の会を結成しよう。東京高裁、東京高検への要請ハガキを集中しよう。高橋裁判長が、市民常識にしたがった公正・公平な判断をおこなうよう市民的な声をとどけよう。
 先般出された司法制度改革審議会の最終意見書を受けて、この臨時国会で司法改革推進本部がつくられ、具体的な法整備などについて国会審議がはじまる。司法改革を真に誤判・えん罪を教訓にし、公正・公平な裁判を確立するためのものにしていくには、これから、われわれ市民の声を大きくしていくことが不可欠である。イギリスやカナダでは、誤判が明らかになったことを受けて、市民や人権NGOの声も聞きながら、証拠開示の保障や当番弁護士制度などの改革がおこなわれている。具体的にえん罪・誤判の実態について取り組んできたわれわれが、司法改革のありかたについてもっと声をあげていこう。「裁判員制度」のもとで「迅速な裁判」をすすめるためには公正・公平な手続きの保障が確立されなければならないし、「無罪推定原則」など刑事裁判の鉄則や人権の教育が必要になるはずだ。あいついだ現職の福岡地検の検察官、東京高裁の裁判官の犯罪とそれにたいする司法の側の対処を見るとき、判検交流の実態や市民常識が通じない現在の司法の根本的な問題にメスが入れられたとは思えない。「人権教育のための国連十年」の国内行動計画でも人権教育の対象から裁判官ははずされたままである。
 今後、国会での議論もふくめて司法改革が議論されるなかでさらに、わたしたち市民の声をつきつけていく必要がある。狭山闘争の勝利をかちとるためにも、積極的に司法改革について学習し、声をあげていこう。

月刊狭山差別裁判題字

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