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<月刊「狭山差別裁判」336号/2001年12月>

司法改革で証拠開示確立を 狭山事件の証拠開示実現を
市民の声ひろげ国会への働きかけを強めよう

 東京高検の担当検察官が、狭山事件にかかわる未開示の証拠を集め整理したところ積み上げれば二~三メートルあると弁護団との折衝でのべたのが一九九九年三月のことである。それから二年八ヵ月が過ぎるが、まったく証拠開示はおこなわれていない。検察官は開示できない理由として「プライバシー侵害の恐れ」という抽象的な言葉をくりかえすだけである。これではだれも納得できない。諸外国の証拠開示手続を見ても、開示が原則であり、検察官が不開示を申し立てる場合は、理由を具体的に明らかにし、裁判所がその当否を判断するというのが普通だ。抽象的、一般的に、しかも一方的にプライバシー考慮や捜査の支障を持ち出して証拠開示を拒むことは許されない。
 イギリスでは一九八〇年代にえん罪事件の誤判があいついで発覚し無罪になった。政府が誤判原因を究明する委員会を設置し調査した結果、誤判原因の多くが証拠が隠されていたためであったことがあきらかになり、委員会は検察官による証拠開示を義務化することを提言し、司法改革の一環として、一九九六年に証拠開示法が決められた。イギリスの現行の証拠開示手続では、検察官は裁判所に証拠を提出すると同時に裁判所に提出しなかった手持ち全証拠のリストを弁護側に提出しなければならない。弁護側はそれらを見て、弁護に必要と思われる証拠の開示を求め、原則として検察官は開示しなければならない。検察官の不開示の裁量も認めているが、その場合、検察官はなぜ開示できないか、プライバシー侵害のおそれであればそれを裁判所に具体的にあきらかにしなければならない。不開示裁量の当否は裁判所が判断する。誤判が現実におきたことを教訓化し、誤判防止のために、証拠開示の合理的な手続きを確立する司法改革をおこなっているのだ。
 証拠リスト(証拠標目)をまず弁護側に提示し、個別証拠開示をおこなうという二段階の開示手続は日弁連の出した証拠開示立法要綱でも提言されている。国連の国際人権自由権規約委員会も、日本政府に実務と法律において証拠開示を保障するよう改善・改革をくりかえし勧告している。
 この臨時国会で、内閣に司法制度改革推進本部が設置されスタートした。国民に開かれた公開性・透明性ある改革作業をすすめるとともに、いまこそ司法改革でえん罪を教訓にした証拠開示の適正なルールを確立するべきである。
 狭山弁護団は、東京高検に証拠リストの開示をくりかえし求めてきたし、東京高裁の高橋裁判長にたいしても、いま刑事訴訟法二七九条にもとづく照会請求をおこない、証拠リストの取り寄せを求めている。事件から三十八年以上が経過してえん罪を争い、新証拠を要件とする再審請求を闘っている石川さんと弁護団からすれば、証拠開示、とりわけ証拠リストを見せてもらいたいという請求は、真実と正義を求めるあたりまえの要求ではないか。異議審が大詰をむかえる一方で、膨大な未提出証拠があることがはっきりしながら隠されたままという、不公平、アンフェアな事態をこれ以上続けることは許されない。狭山事件の証拠リスト開示がただちにおこなわれなければならない。
 国会における証拠開示改善・改革の議論を喚起し、狭山事件の証拠開示実現と司法改革で証拠開示確立をめざして闘いをさらに強化しよう!

月刊狭山差別裁判題字

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