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<月刊「狭山差別裁判」364号/2004年4月>

国際社会に通用する証拠開示法制化を実現しよう
補充書提出を受けて特別抗告審の正念場を全力で闘おう

 政府は与党で合意した裁判員制度導入の法案と刑訴法の改正案を閣議決定し、通常国会に提出した。衆議院法務委員会での審議が始まっている。われわれがくりかえし指摘してきたように、この法案では、証拠の開示不開示の判断が一方的に検察官に委ねられており、窓意的な判断によって証拠が弁護側に開示されないという事態を招く。また、証拠を特定し、重要性を明らかにして請求するように弁護側に求めることは、検察官手持ち証拠の内容さえ知ることができない弁護側からすれば開示請求すらできないことになり、アクセス権が保障されない。現に狭山事件では大量の証拠が未開示のまま紛糾している。政府案では「証拠開示の拡充」とはいえない。少なくとも、証拠リストの弁護側への開示を制度化し、供述調書や鑑定書、取り調べ状況を記録したものなど一定類型の証拠については請求があれば自動的に開示するルールでなければ、えん罪・誤判を防ぎ、国際社会に通用する制度にはならない。すでに証拠リスト開示を制度化しているイギリスで、検察官による開示義務の範囲をより客観化する(検察官の主観的な判断に委ねない)ための法改正が昨年おこなわれた。また、アメリカではこの間、重要な証拠が開示されていなかったことを理由に死刑囚の再審が開始されるという判決があいついでいる。こうした世界の証拠開示法制を見ても、政府案では決定的に不十分であることは明らかだ。公正な証拠開示を求める会の証拠開示法制要綱案を支持する署名が三十万人以上も寄せられていることを受けて、民主党では、証拠開示法案を独自に提案する予定である。誤判・えん罪をなくすための証拠開示法制度を実硯するために、さらに運動を広げ、国会議員への訴えをさらに強めたい。
 三月二十三日に、狭山弁護団は、最高裁判所に特別抗告申立補充書を提出した。同時に、この三月からあらたに担当となった藤井敏明・最高裁調査官と面会し、補充書の内容について説明するとともに、棄却決定取り消しと事実調べ・再審開始の必要性を訴えた。今回の補充書で、弁護団は、これまで提出した21通におよぶ筆跡に関する鑑定書、意見書、調査報告書の内容・意義を再度、最高裁に訴えるとともに、有罪証拠とされた三つの筆跡鑑定の誤りを詳細に批判しつくしている。また、斎藤鑑定人による一連の鑑定結果、とくに真犯人による 「犯行前の万年筆使用痕跡」を示す「2条線痕・抹消文字」の意義を強調し、万年筆と無縁であった石川さんが犯人ではありえないこと、さらに、自白の疑問の数々、万年筆の疑問に結びつくことを指摘している。自白とそれに依拠した有罪判決を全面的に見直す必要があることは明らかだ。
 弁護団の補充書提出を受けて、特別抗告審はいよいよ正念場をむかえる。筆跡鑑定にしても斎藤鑑定にしても、有罪判決の根幹を揺るがすものであり、事実調べは不可欠である。最高裁は棄却決定をただちに取り消し、東京高裁に差し戻して、鑑定人尋問などの事実調べを保障すべきである。
 石川さんが脅迫状を書いたのではないとする多数の筆跡鑑定の意義や「2条線痕」の意味、自白の矛盾・不自然さ、押収万年筆の疑問を徹底して市民に広げ、最高裁に事実調べ・再審をせまる闘いをもりあげねばならない。総学習を強化し、特別抗告審の闘いを全力でおしすすめよう。


月刊狭山差別裁判題字

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