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<月刊「狭山差別裁判」376号/2005年4月>

最高裁・特別抗告棄却決定を徹底して批判しよう!
司法の現実に目を向けて反撃の闘いをすすめよう!

 さる四月五日付で名古屋高裁は、名張事件の第七次再審請求にたいして再審を開始する決定をおこなった。名古屋高裁の小出裁判長は、弁護側から提出されていた2つの新鑑定について、鑑定人尋問をおこない、鑑定人の説明と弁護側の主張を十分聞いたうえで、これを従来の証拠と総合的に評価し、それをふまえて自白の再検討をおこなっている。その結果、自白の信用性に疑問が生じ、有罪判決の認定に合理的疑いが生じているので再審を開始するというものである。白鳥・財田川決定で示された判断方法、「無実の人を誤判・えん罪から救済する」という再審の理念に従った決定といえよう。そもそも、裁判官は科学鑑定の専門家ではないのであるから、鑑定人尋問によって専門家の意見を聞くのは当然である。実際に鑑定人尋問や現場検証などの事実調べは、この間も日野町事件や布川事件、足利事件などの再審請求でもおこなわれている。ところが、狭山事件では、19年におよんだ第2次再審請求で、元警察鑑識課員の斎藤保・指紋鑑定士の5通の鑑定書、19通の筆跡鑑定書、3次元スキャナによる足跡鑑定など多数の鑑定書が出されていたが、一度の事実調べもなされなかった。一方で、最高裁の棄却決定は、「肉眼で観察しても判然としない」などと弁護側に反論の機会も与えず、裁判所の一方的な判断で専門家の指摘をしりぞけている。
 最高裁棄却決定は、新証拠とその他の証拠の総合評価も自白の全面的な再検討もおこなっていない。そして、たとえば、犯人の残した脅迫状・封筒に石川さんの指紋がなかったことについて、「自白に出ていないからといって指紋がつかないようにしなかったとはいえない」といって、石川さんは触れていないとい弁護側の鑑定や主張をしりぞけている。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に反していることは明らかだ。事実調べや証拠開示の保障など再審請求のルールがないまま、恣意的な判断が一方的におこなわれているといわざるをえない。
 名張事件の再審開始決定にたいして、名古屋高検は異議申立をおこなった。事件から四十四年、死刑囚として再審を訴えつづける奥西さんは79歳である。真実発見が目的というなら再審開始を確定させ、ただちに再審公判をおこなうべきであろう。ただメンツを守ることだけに汲々としている司法権力の姿勢があらわれている。昨年には、東京高裁が袴田事件の再審請求の即時抗告を棄却し、大崎事件では、福岡高裁宮崎支部が検察の抗告を受け入れ再審開始決定を取り消して再審請求を棄却している。棄却の論理は今回の狭山事件の最高裁の決定と同じだ。狭山事件で証拠開示を拒み続けている検察や証拠開示も事実調べも保障せず不意打ち的に棄却する最高裁のありかたもふくめて、わたしたちはこうした司法の実態、現状にきびしい目を向け、さらに司法改革の運動をすすめていかなければならない。
 まず徹底して最高裁・特別抗告棄却決定を批判し、狭山事件の真相、石川さんの無実、司法の不当性を暴いていくことが大事である。最高裁に対する抗議文や抗議ハガキの運動とともに、棄却決定批判学習や抗議集会を幅広くおこなおう。石川さんが不当逮捕され、えん罪におとしいれられて42年を迎える5月24日には、狭山事件の再審を求める市民の会を中心にした実行委員会の主催で市民集会が開催される。不当決定に対する抗議とあらたな闘いにむけた集会であり、全国の仲間の参加で成功させよう!最高裁を頂点とする司法を変えていく闘いも視野に入れ、原点にかえって狭山再審闘争を闘い抜こう!


月刊狭山差別裁判題字

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