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<月刊「狭山差別裁判」391号/2006年7月>

狭山事件最大の物証=脅迫状は石川さんが書いたものではない!
東京高裁は事実調べをおこない再審を開始せよ!

 狭山事件では、事件の発端となった脅迫状が犯人の残した唯一の客観的証拠である。確定判決となっている寺尾判決も有罪証拠の主軸としている。しかし、確定判決は、脅迫状は自白を離れた客観的な有罪証拠といいながら、脅迫状と石川さんとの結びつきを認定するにあたって、自白を引用している。たとえば、寺尾判決は、当時の石川さんがあまり漢字を知らなかったと認めながら、家にあった漫画雑誌「りぽん」から知らない漢字をルビを頼りに拾い出して書いたと認定しているが、その根拠は石川さんの自白だけである。また、昨年の最高裁の特別抗告棄却決定も、脅迫状を書く際に3回書き損じたという自白を引用して、数回の下書き(練習)をへれば筆勢も早くなり、「文字の巧拙・表現力などにつき差異が生じた」として、筆跡の相違点をごまかしている。
 弁護団が第3次再審請求で提出した新証拠は、こうした確定判決や棄却決定の認定の誤りを明らかにしている。
 半沢英一・金沢大学助教授による第2鑑定は、ベイズの定理を応用した同筆性確率公式をもとに、石川さんの筆跡と脅迫状が異筆であると鑑定している。石川さんの1965年までの筆跡データをもとに筆跡の「安定した相違性」を調べるとともに多数の筆跡サンプルをもとに筆跡の類似点とされる特徴の希少性も検討するあらたな手法による筆跡鑑定であり、確定判決の証拠の主軸を崩す明白な新証拠であるといえる。
 そもそも、石川さんが逮捕直前に書かされた上申書にしても取り調べ中に脅迫状を見せられたあとに書かされた「脅迫状写し」にしても、脅迫状の筆跡とまったく似ていないことはだれの目にも明らかであろう。半沢第2鑑定は、その筆跡の相違性を科学的・合理的に証明したといえる。同時に、警察の筆跡鑑定やこれまでの裁判所の判断が、筆跡の類似点のみ強調することで、その希少性や相違点の存在を軽視していることの不合理・不公平さをも指摘しているといえる。
 また、川向・加藤意見書、内山・熊谷意見書は、非識字者の実態という観点から、石川さんと脅迫状の筆記能力の違いを明らかにするとともに、「りぽん」から漢字を拾い出して書いたという自白のおかしさ、確定判決や棄却決定の認定の誤りを明らかにしている。東京高裁は、鑑定人尋問を実施し、鑑定内容を十分に検討・理解すべきである。
 脅迫状の封筒の筆記用具について、「少時」部分が万年筆で書かれているとする化学者の鑑定書も今回あらたに提出されている。脅迫状・封筒の筆記用具はボールペンと万年筆の2種類が使われているとする鑑定結果が、斎藤保・指紋鑑定士をはじめとする3人の元鑑識課員によって出され、2人の化学者による鑑定書がそれを裏付けたということである。石川さんの自白は筆記用具という点からも事実と食い違っている。
 弁護団の提出した新証拠によって、狭山事件最大の物証である脅迫状と石川さんの結びつきは崩れているというべきである。裁判所は、筆跡・筆記能力の違いとともに、脅迫状を書いたという自白の信用性を全面的に再検討しなければならないはずだ。第3次再審請求の審理を担当する東京高裁第4刑事部に鑑定人の尋問をおこなわせるために世論をもりあげ、市民の声を届ける必要がある。そのために、東京高裁に事実調べ・再審開始を求める100万人署名運動に全力でとりくもう。地域、職場、団体だけでなく、積極的に街頭での署名活動もおこなおう。学者・文化人・ジャーナリストなど各界の著名人が狭山事件の公正裁判・事実調べ・再審を求めていることを市民にアピールし、一人でも多くの署名を集めるとともに、石川さんの無実と狭山事件の再審を訴えよう。


月刊狭山差別裁判題字

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