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<月刊「狭山差別裁判」393号/2006年9月>

狭山事件の再審請求で鑑定人尋問は不可欠だ!
事実調べ求める新100万人署名を早急に達成しよう!

 狭山事件では、確定判決となっている2審の寺尾判決以来32年も事実調べがおこなわれていない。再審請求では、「殺害現場」とされる雑木林のすぐ隣の畑で事件当日農作業をしていた人の「悲鳴は聞いていない。人影もなかった」という証言が証拠開示で明らかになり、自白と矛盾する新証拠として出されたが、裁判所は証人尋問も現場検証もおこなうことなく自白と矛盾しないとしりぞけている。万年筆の発見経過について元狭山署刑事の 「家宅捜索時にカモイを調べたが何もなかった」という新証言も明らかになったが、裁判所は証人尋問もカモイの現場検証もおこなわずに「記憶が定かではない」「カモイは見えにくく見落とすような場所」と決めつけてしりぞけている。殺害方法についても、裁判所は鑑定をおこなった法医学者の鑑定人尋問もおこなわず、一方的に検察側が出してきた石山鑑定に依拠して弁護側鑑定をしりぞけている。対立する鑑定が出されているのであるから、鑑定人尋問をおこない、弁護側の主張を十分に聞いて証拠価値を判断するのが当然であろう。しかも石山鑑定は再審段階になって検察官が出してきた鑑定書であり証拠調べもおこなわれていないし、証人尋問による弁護側の反論も保障されていない鑑定である。
 複数の筆跡鑑定や筆記用具の食い違いを指摘した元鑑識課員の鑑定、3次元スキャナを使った足跡鑑定など弁護側は専門家による鑑定書を多数提出している。だれが考えても鑑定人の尋問をおこなうことは不可欠である。事実調べもおこなわず新証拠を一方的に否定することは再審の理念に反している。
 再審請求における事実調べについて日本弁護士連合会が編集した「続・再審」は、「刑事訴訟法四四五条は、『必要があるときは、事実の取調』ができると規定する。しかし、この規定は、必要性が客観的に認められるときは、事実の取調は義務的だとする法意に解釈されなければならない」とし、狭山事件で出された新証拠は「事実の取調が義務となるケース」と指摘して、事実調べがまったくおこなわれていないことを批判している。1991年には著名な刑事法学者81名が「狭山事件の事実調べを求める署名」を東京高裁に提出している。二度にわたって全国放映された鳥越俊太郎さんがキャスターをつとめるテレビ番組「ザ・スクープ」でも事実調べをおこなうべきだということが強調されていた。マスコミもまた事実調べは不可欠だと指摘しているのである。
 いま、全国ですすめられている新100万人署名は、第3次再審請求で、こうした事実調べを今度こそおこない、公正・公平な再審請求の審理を保障して再審を開始すべきだと東京高裁に求めるものである。そして、多くの著名な文化人やジャーナリスト、学者が呼びかけ人となっている。
 これを大きな国民世論、市民の声にして東京高裁に届けるということが、新100万人署名運動の意義である。狭山事件の真相、石川さんの無実を示す新証拠、事実調べの必要性、えん罪の恐怖を粘り強く訴え、署名を獲得し世論を大きくしよう。
 市民の常識的な判断、人権感覚を刑事裁判にとりいれるということが裁判員制度を導入する意味であり、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を徹底させることが不可欠である。いまは、市民がえん罪の現実を考え、公正な裁判とえん罪をなくすための改革を求める声をあげる重要なときでもある。
 こうした狭山新100万人署名の意義を確認し、全国各地の街頭で、また各団体で署名運動に全力でとりくもう。一日でも早く100万人署名を達成し、さらにそれを超える署名を東京高裁に届け、なんとしても第3次再審で事実調べを実現しよう。


月刊狭山差別裁判題字

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