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<月刊「狭山差別裁判」398号/2007年2月>

狭山再審請求30年――いまこそ事実調べを!
東京高裁は事実調べ・再審求める100万人の声を聞け!

 狭山事件で、石川さんが再審を求めて30年が経過した。1977年8月9日、最高裁の抜き打ち的な上告棄却決定によって二審・東京高裁の無期懲役判決(寺尾判決)が確定判決となった。石川さんと弁護団は確定判決の誤り、無実を訴えて、同年8月30日、東京高裁に再審請求を申し立てた。この30年間の再審の闘いで、弁護団は石川さんの無実を証明する新証拠をつぎつぎと提出してきた。
  第1次再審では、脅迫状の訂正された日付部分が自白の「4月28日」ではなく「4月29日」であることが判明した。証拠開示によって0証言が明らかになり、「犯行現場」自白が虚偽・架空のものであることが焦点となった。第2次再審では元鑑識課員の斎藤鑑定人による一連の鑑定によって脅迫状・封筒の筆記用具が自白と食い違っていることが明らかになり、大きな争点となった。元刑事の証言や筆跡鑑定、法医学鑑定などの新証拠も多数出され、裁判所の判断はこの30年間で大きく後退している。裁判所は脅迫状と石川さんの筆跡の相違を認めながら、その相違は「書字条件」の違いによるものと言い出している。殺害方法も認定が変わり、自白と確定判決は完全にくずれている。
  この30年間の再審請求で最大の問題は裁判所がまったく鑑定人尋問や現場検証などの事実調べをおこなっていないことである。これだけ重大な新証拠が出されながら30年間一度も事実調べさえないということは不当・異常な事態である。事実調べもせず、認定を変更しながら、有罪判決に合理的疑いは生じていないとして再審を認めないことは、無事の救済(無実の人を誤判から救済する)という再審の理念に明らかに反している。
  狭山事件・再審請求30年にあたって、鑑定人尋問などの事実調べをおこなうよう強く東京高裁に求めなければならない。
  第3次再審にはいって、昨年8月から狭山事件の事実調べを東京高裁に求める新100万人署名運動が始められ、さる5月23日に100万筆を突破した。北海道、東北から沖縄まで全国から署名が寄せられ、短期間に100万人を超えたことは、石川さんの無実を確信する人たち、公正・公平に事実調べ・証拠開示をおこない再審を開くべきだという市民の声、反差別・人権を求める世論の広がりを示すものである。
  狭山事件の第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部の裁判長が、さる5月23日で交代し、あらたに就任した門野博・裁判長による新証拠の検討、審理はこれからである。弁護団は第3次再審請求で筆跡鑑定などの新証拠を提出し、さらに新証拠を積み重ねて門野裁判長に事実調べを求めていくとしてい る。
  東京高裁・門野裁判長は狭山再審を求める100万人の声を真剣に受けとめ、事実調べをおこなうべきである。
  ことしは年明けから無罪判決があいつぎ、えん罪・誤判を生まないために、取り調べの完全な可視化、証拠開示の保障が必要であり、とりわけ、裁判員制度導入を前にして改革が急務であることがくりかえし指摘されている。映画「それでもボクはやってない」のヒットもふくめて、えん罪が市民の身近な問題であり、えん罪をどうしたらなくせるかということに市民は大きな関心を寄せている。わたしたちは、狭山再審の闘いとあわせて、えん罪をなくすための司法改革の必要性を訴え、参議院での与野党逆転状況もふまえて、いまこそ取調べの可視化、公正かつ全面的な証拠開示の確立など具体的な司法の民主化へと結びつけていかなければならない。
  各地で、署名運動報告集会を開き、署名運動を継続し、さらに狭山再審を求める世論を広げることを確認するとともに、狭山再審30年と事実調べの必要性、えん罪をなくすための司法民主化をアピールしていこう。


月刊狭山差別裁判題字

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