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<月刊「狭山差別裁判」403号/2007年7月>

取調べ可視化法案の参議院での可決の意義をふまえ
公正な裁判を実現する司法民主化の声をさらに大きくしよう!

 2007年12月に民主党が参議院に提出したいわゆる取調べ可視化法案が2008年6月4日の参議院本会議で可決された。この法律案は、被疑者の取調べの全過程を録画・録音する制度を導入しようという刑事訴訟法の一部改正案である。法案は、この録画・録音という手続に反して作成された自白調書は証拠とすることができないという規定や検察官手持ち証拠のリストを弁護側に開示することももりこまれている。
  こうした法案が国会に提案され、参議院で可決されたことの意味は大きい。警察、検察は法案可決にこめられた国民の声を受けとめ、自白偏重の捜査を改めるよう徹底すべきである。参議院で反対した自民・公明両党もえん罪当事者や国民の声を真剣に受けとめ、全面的可視化の実現にむけて努力してほしい。衆議院における法案のすみやかな審議と成立を訴えたい。
  昨年、警察による誤認逮捕が明らかになり再審で無罪となった富山の氷見事件では、現場の足跡と被告の足跡が3.5センチも違う事実や自白内容のさまざまな疑問について、裁判所は十分な証拠調べをおこなわないまま間違った有罪判決をおこなった。誤判と重大な人権侵害がおきた大きな原因は自白偏重の捜査・裁判である。真実ではない自白調書が裁判に出され、これにたよって裁判所が誤った有罪判決をおこなったという厳然たる事実は重大な問題である。こうした自白偏重の捜査・裁判を戒め、取調べの実態を厳しくチェックするとともに、自白の信用性を慎重に吟味し、十分な証拠調べをすることが必要であり、そのために取調べの全過程を可視化するというのが今回の可視化法案の趣旨であろう。
  また、氷見事件や志布志事件では、検察の証拠隠しやねつ造も問題となった。法案は、裁判の公正さを実現するために、検察官がどのような証拠を持っているのか弁護側にわからないという現在の証拠開示手続の不公平さを、証拠リストを弁護側に開示することで是正しようというものである。
  裁判員制度開始をひかえた今こそ、志布志、氷見事件等のえん罪事件で明らかになった深刻な日本の刑事司法の実態を早急に改善する必要がある。代用監獄の廃止や人質司法といわれる長期勾留の実態の改善など、えん罪をなくすための司法民主化の課題はまだ残されている。
  えん罪の現実をふまえて取調べの全過程を可視化する法律案がはじめて国会で議論され、参議院で可決されたことを第一歩として、さらに公正裁判と司法民主化を求める声を大きくしていく必要がある。
  石川さんが45年間無実を叫びつづけている狭山事件では、弁護側が求める検察官手持ち証拠の開示が20年以上もおこなわれておらず、自白の信用性が争点となり、弁護側から多数の新証拠が出されながら事実調べが30年以上もおこなわれていない。
  今回の法律案が要請するのは、えん罪をなくし、裁判の公正さを実現しなければならないということであり、裁判所は法案が参議院で可決されたことを重く受けとめ、その趣旨をふまえて、自白の信用性や取調べが問題となっている多くの再審請求について、事実調べと証拠開示を保障し、調べ直すべきである。
  わたしたちは、可視化法案の意義とともに、こうした狭山事件の不当・不公平な実態を訴え、可視化・証拠開示法制定と司法民主化、狭山第3次再審における事実調べ・証拠開示・再審開始を訴えていこう!


月刊狭山差別裁判題字

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