pagetop
 
 

 

<月刊「狭山差別裁判」416号/2009年11月>

「犯行現場」「犯行態様」などの自白の核心について
さらなる証拠開示と事実調べをおこなうべきだ

 2010年5月13日の三者協議で東京高検は36点の証拠開示をおこなったが、3項目の開示勧告については「不見当」と回答した。しかし、雑木林内を撮影した8ミリフィルムは当時の警察の作成した実況見分調書に「8ミリ撮影した」とはっきりと書かれているものであり、ただ「見当たらない」というだけでは納得できない。また、殺害現場とされる雑木林の血痕検査報告書については、当時の埼玉県警鑑識課員が「自白後に裏付けのためにルミノール反応検査をおこなった」と証言しており、市民常識からしても「見当たらない」という検察官の回答は納得できない。当時の新聞でも、自白後に裏付け捜査や実況見分がおこなわれたと報じられており、「犯行現場」に関する実況見分調書や捜査報告書などがかならずあるはずである。これら「犯行現場」にかかわる関連する資料をすべて開示し、徹底して真相が解明されなければならない。
  犯行現場がこの雑木林なのかという問題は重要である。自白では、Ⅹ字型十字路で偶然出会った女子高校生を誘拐しようと考え、呼び止めて雑木林まで連行したことになっている。そもそも、16歳の勝気な高校生が下校途中に、見知らぬ若い男にいきなり自転車をとめられ、用があると言われただけで、雑木林の中まで着いていくなどということが不自然極まる。出会いから連行の自白もおかしい。
  また、自白では、殺害後、雑木林内で脅迫状を訂正、宛名を書き加えたことになっている。犯行現場が真実ではないということになれば、脅迫状の訂正という自白も疑わしいことになる。有罪判決は被害者の万年筆を使って雑木林の中で加筆、訂正をおこなったとしているが、封筒の宛名や脅迫状の訂正箇所の筆記用具は、石川さん宅のカモイから発見された万年筆でもなく、被害者が使用していた万年筆とも違うことが元鑑識課員や万年筆の専門家による鑑定で明らかにされている。このことは、万年筆発見経過の疑問をさらに深め、警察によるねつ造の疑いを強くする。
  自白では、雑木林での殺害後、死体を前にかかえて芋穴まで運び、足にロープをくくりつけて逆さづりにして一時隠しておいたとなっているが、これぐらい荒唐無稽な自白はない。死体運搬や逆さづりが科学的にありえないこと、殺害方法が自白や判決の認定と食い違うことも鑑定で明らかにされている。このように自白のおかしさは相互に関連しあっている。殺害現場に生じた疑問は、そのほかの自白内容の疑問と結びつき、ひいては、自白全体の信用性に疑問を生じさせる。東京高裁は、さらなる開示勧告と事実調べをおこなうべきである。
  次回の三者協議にむけて、東京高裁、東京高検にたいする要請ハガキ運動を各地からすすめよう!


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円