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<月刊「狭山差別裁判」444号/2013年3月>

手拭いの新証拠は重大な無実の新証拠だ!
裁判所は徹底した証拠開示と事実調べをおこなうべきだ

 狭山弁護団は、第15回三者協議に先立って、10月17日に手拭いに関する新証拠と証拠開示勧告申立書を提出した。
  今回提出された手拭いの新証拠は重要だ。被害者の死体を後ろ手に縛っていた手拭いは市内の米屋がこの年の正月に得意先に配付したものであり、警察は5月4日の死体発見直後から配付先を捜査した。石川さんの家にも手拭いが1本配られていたが5月11日に警察に提出されている。素直に考えれば石川さんは事件とは関係ないことになるはずだ。しかし、捜査に携わった検察官は2審の法廷で「TBSテレビが手拭いについて放送したので家族が手拭いを義兄か隣家から都合をつけて警察に提出した」と証言し、東京高裁の有罪判決も家族による偽装工作として、手拭いの入手可能性を有罪証拠のひとつにあげたのである。
  ところが事件発生から50年たって、ことし3月にようやく証拠開示された捜査報告書には、事件直後の5月6日昼過ぎの午後0時20分に警察官が石川さん宅で手拭いを確認していることが書かれていた。
  さらに、弁護団の弁護士法にもとづく照会請求による事件当時の放送内容の問い合わせに対するTBSテレビの回答書によれば、TBSテレビが手拭いについて放送したのは1963年5月6日の昼のニュース(午後0時2分過ぎから50秒程度)であった。すなわち、開示された当時の捜査報告書とTBSテレビの回答書で、手拭いのニュース放送から警察官が手拭いを確認するまでわずか17分しかないことが明らかになった。この間に石川さんの家で手拭いを都合つけたことは考えられない。
  また、同じくことし3月に証拠開示された死体発見直後の5月5日の捜査報告書の手拭い配付一覧表では石川さんの義兄の家へ配られた手拭いは1本と書かれており、「2本配付され1本は警察に提出し、もう1本が石川さんの家にまわった」とする検察官の主張と食い違う。しかも、この配付数を示す「1」が上下に線を書き加え「2」と見えるようにされているのだ。弁護団は、別の筆記具による書き加えによって数字が変造されているとする鑑定意見書もあわせて提出した。警察、検察の捜査が犯行に使われた手拭いの出所をつきとめる捜査から石川さんにどう結び付けるかという捜査に変質した疑いを示している。
  これら提出された新証拠によって、検察官の手拭い入手可能性の主張が成り立たないことが明らかになり、それを根拠にした有罪判決に合理的疑いが生じたというべきだ。今回の新証拠は、犯行に使われた手拭いが石川さんの家のものではないこと、石川さんの自白が虚偽の自白であり、石川さんの無実性を示すきわめて重大な新証拠である。
  弁護団は、これら新証拠を提出するとともに、手拭いについてのTBSの放送内容に関する捜査報告書や手拭い配付先の聞き込み捜査報告書などの証拠開示を求めた。しかし検察官は開示におうじず、河合裁判長は検察官に検討を促し、継続して協議する課題となった。検察官はすみやかに手拭い捜査資料などをすべて開示すべきだ。


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