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主張&声明

東京高検は埼玉県警の証拠物一覧表をすみやかに開示せよ!
東京高裁は徹底した証拠開示をすすめるべきだ!

(月刊「狭山差別裁判」466号/2016年5月)

 昨年1月に東京高検に保管されている証拠物の一覧表(領置票)がようやく弁護団に開示され、東京高検に現在279点の証拠物(供述調書などの書証ではない物的証拠)があることがわかった。その中には、すでに裁判で証拠品として提出された現場足跡などのほか、第3次再審で証拠開示された逮捕当日の石川さんの上申書なども含まれる。東京高検がもっと早くにこの一覧表を開示していれば、筆跡の明らかな違いを示す重要な証拠の存在も早くに判明し開示されていたはずだ。証拠のリストを開示することがいかに重要かを示している。領置票によって、事件直後に現場を撮影した航空写真のネガフィルムがあることがわかり開示された。弁護団は虚偽自白を明らかにするうえで航空写真が活用できないか分析している。

  一方、弁護団が開示を求め、東京高裁の門野裁判長が開示勧告した犯行現場を撮影した8ミリフィルムについて、検察官は「不見当」(見当たらない)と回答し、なぜ見当たらないかは不明としている。捜査段階で警察が実況見分の際に殺害現場とされる雑木林を8ミリで撮影したことは調書にも記載され、当時の新聞でも報じられており間違いない。自白の裏付けのためにおこなわれた実況見分で撮影された重要な8ミリフィルムがその後無くなり、その経緯は不明などということは信じがたいことである。犯行現場を撮影した8ミリフィルムが捜査段階で存在したにもかかわらず、東京高検の領置票には載っていない。この経緯を明らかにするためにも、捜査段階で埼玉県警が収集した証拠物のリストを弁護側に開示すべきであろう。狭山弁護団が、東京高検以外のさいたま地検や埼玉県警で作成された証拠物の一覧表を開示するよう求めたのは当然である。

  袴田事件では、取調べを録音したテープが警察にあったとして昨年開示された。取調べテープという重要な証拠物を警察が検察に送らず、そのままにしていたということになる。狭山事件でも、万年筆発見のもとになった略図という需要な証拠を検察に送らず、警察官が2審段階で法廷に提出するという不可解な扱いをしている。ことし2月には、大阪府警のほとんどの警察署で、4300以上の事件の10000点以上の証拠品が段ボール箱に入れられるなどして警察署内の機械室や車庫などに放置されていたことが明るみに出てズサンな証拠管理が問題になった。埼玉県警などの証拠物一覧表の開示は不可欠である。ところが、東京高検は先般の三者協議で、埼玉県警などの証拠物一覧表を開示する必要はないとしている。

  さる5月に「刑訴法の一部を改正する法律案」が可決され、証拠の一覧表を弁護側に交付する制度ができた。参議院法務委員会の附帯決議は、「本法が度重なるえん罪事件への反省を踏まえて重ねられた議論に基づくもの」としたうえで、政府および最高裁判所が格段の配慮をすべき事項の一つとして、「再審が無辜の救済のための制度であることを踏まえ、証拠開示の運用、刑事訴訟法第四百四十五条の事実の取調べの在り方をめぐる国会の審議の状況の周知に努めること」をあげている。今回の証拠の一覧表交付制度は再審への適用はないが、再審請求においてこそ証拠開示や事実調べが不可欠であることを指摘した決議であろう。

 東京高裁の植村裁判長は、こうした国会決議・国会審議もふまえて、弁護団の求める証拠開示をすすめ、検察官に対して、証拠物の一覧表を開示するよう勧告すべきである。


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