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主張&声明

開示証拠によって狭山事件の冤罪の真相が明らかになっている!
東京高裁は鑑定人尋問をおこない再審を開始すべきだ!

(月刊「狭山差別裁判」502号/2020年3月)

 狭山事件の第3次再審請求では、2009年に東京高裁の門野裁判長が検察官に証拠開示を勧告し、翌年5月に36点の証拠が開示されて以来これまでに191点の証拠が開示された。逮捕当日に石川さんが書いた上申書、被害者のインク瓶、発見万年筆で書かれた数字が記載された書面など開示証拠によって、あらたな科学的鑑定がおこなわれ、有罪判決の誤りと石川さんの無実を明らかにする新証拠がいくつも提出されている。これら証拠開示によって発見された新証拠が有罪判決に合理的疑いを生じさせており、再審開始の理由となることは明らかだ。

 狭山事件では、死体発見現場近くで発見されたというスコップが石川さんがかつて働いていた被差別部落出身のIさんの養豚場のものであり、石川さんが盗んで死体を埋めるのに使ったとして有罪証拠とされている。弁護団はこのスコップが、死体を埋めるために使われたものとも、I養豚場のものともいえないことを指摘した元科捜研技官の鑑定書を第3次再審で提出している。スコップに関する当時の捜査報告書なども証拠開示され、警察が被差別部落の青年が働くI養豚場に見込み捜査をおこない、石川さんを狙い打ちしていたことも浮かび上がっている。

 また、取調べ録音テープや石川さんの取調べをした関巡査が作成した捜査報告書などが証拠開示され、新証拠として提出されている。関巡査の報告書は、石川一雄さんが単独犯行の自白を始めた6月23日に作成されたもので、関巡査との1対1の取調べで石川さんが「善枝ちゃんはどうなっていたんべい。それを教えてくれればわかるんだ」と尋ねたと報告している。開示された取調べ録音テープとも内容的に一致しており、明らかに石川さんが死体の状況を知らなかったこと、また自白がつくられたものであることを示している。

 関報告書と取調べ録音テープは、捜査官らが検察官と共謀して2審の法廷で偽証していることも浮かびあがらせている。取調べテープから、石川さんと関巡査との1対1の取調べで、犯行の状況を答えられない石川さんに関巡査がいろいろと説明し、その後、長谷部警視ら3人の刑事が加わった取調べで虚偽の自白調書が作られていくという経過だったことが明らかになったうえに、この虚偽の自白調書が作られていく経過を裁判の中で検察官が隠そうとしていたことがわかったのだ。2審で関巡査が法廷で証言した後に、主任検事の原検事が、取調べ官である3人の警察官の供述調書を作成し、単独犯行を自白したとき関巡査はいなかった、死体の状況などよく知っていた、すらすら自白したという内容の供述をとっていたことが開示された捜査書類でわかったのである。取調べにあたった捜査幹部の長谷部警視や自白調書を作成した青木警部は、2審の法廷でその供述調書通りに証言して、関の法廷証言を否定しているのだ。これら捜査官の証言を根拠に「取調べで不当な誘導はなかった」「自白は信用できる」と認定した2審・東京高裁の寺尾判決は明らかに誤っていたというべきである。

 裁判所は、新証拠をもとに捜査の経過、自白の経過を十分検討し、狭山事件でいかに冤罪が作られていったかを見るべきであろう。鑑定人尋問をおこない、狭山事件の再審を開始すべきである。


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