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主張&声明

東京高裁は事実調べをおこない虚偽自白の真相の究明を!
狭山事件の再審を開始し58年におよぶ誤判に終止符を!

(月刊「狭山差別裁判」514号/2021年3月)

 いまから57年前、狭山事件の第1審で浦和地裁・内田武文裁判長は、「死刑になるかもしれない重大犯罪であることを認識しながら自白していることが窺われ特段の事情なき限り措信しうる」として、石川さんの自白を根拠に死刑判決をおこなった。死刑になるような事件で自白する以上、真実に違いない」「やってない人が自白するはずがない」という見方だ。

 内田裁判長は、被害者のものとされる万年筆が発見された石川さん宅お勝手入口の鴨居の現場検証をおこなっているが、判決で「鴨居は人目につきやすいところなのでかえって捜査の盲点になり家宅捜索で警察官は見落とした」として、3回目の捜索で発見されたことに疑問はないと認定した。

 しかも裁判では、弁護団が2回目の家宅捜索について警察官を尋問しようとしたのに対して検察官が反対すると、内田裁判長は尋問を認めず審理を打ち切っている。結局、内田裁判長は、弁護団の求める証拠調べをことごとく却下し、わずか5か月で死刑判決をおこなっている。こうした裁判官のやり方の根底に、自白しているから犯人という決めつけがあったと言わざるをえない。

 心理学者の浜田寿美男・奈良女子大学名誉教授は、「無実の人がどのような心理過程を経て虚偽自白に陥るのか」を裁判官があまりに知らないために間違った認定をしてしまうと指摘する。(岩波新書『虚偽自白を読み解く』2018年)

 足利事件で、菅家利和さんは自白を大きな根拠に有罪判決(無期懲役判決)を受けたが、再審請求でDNA鑑定の再鑑定をおこなったところ、犯人ではないことが明らかになり無罪となった。無実の罪で菅家さんは17年半も拘禁された。しかも、虚偽の自白を最高裁もふくめて裁判官は見抜けなかったのだ。足利事件で無期懲役判決を出した1審の久保眞人裁判長、2審の髙木俊夫裁判長は、狭山事件で第2次再審請求を棄却した裁判官だ。1980年代にあいついで4人の死刑囚が再審で無罪となったが、いずれも犯行を認める自白をとられていた。虚偽自白だったのだ。無実の人がやってもいない犯行を自白するということが現実にあることは明らかだ。足利事件を教訓に、虚偽自白による冤罪があり、死刑や無期懲役という誤った判決が出されていたことを司法は真剣に反省、総括しなければならない。

 狭山事件の1審死刑判決、検察官の論告と当時の新聞報道を見ると、こうした報道の影響も受けて裁判官が偏見をもって審理をおこなっていたのではないかと思わざるをえない。自白依存の誤判の背景には、検察官や裁判官の偏見、人権感覚の欠如もあったと言わざるをえない。司法関係者への人権教育も必要だ。

 狭山事件の第3次再審請求では、取調べ録音テープが事件後47年もたって証拠開示され、自白強要ともいえる取調べの実態が明らかになった。また、石川さんが犯行を語れない「無知の暴露」が明らかになり、警察官が暗示を与えて自白内容が作られていったことも浮かびあがった。取調べテープを分析した浜田鑑定、脇中鑑定も提出された。また、筆跡や万年筆、スコップ、足跡、目撃証言、血液型など有罪の証拠とされたものの誤りも科学的な新証拠によって明らかになっている。

 第3次再審請求を審理する東京高裁第4刑事部(大野勝則裁判長)は、自白にいたる経過、有罪の証拠が作られた経過を検証し、それらの信用性を見直すべきである。

 わたしたちは、狭山事件でいかに冤罪が作られていったか、原点にかえって学習し、石川さんの無実と狭山事件の再審開始を訴えよう。東京高裁に鑑定人尋問と再審開始を求める世論をさらに大きくしよう。


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