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主張&声明

東京高裁は鑑定人尋問をおこない狭山事件の再審開始を!
再審における証拠開示を義務化する法改正を求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」525号/2022年2月)

 さる3月3日、名古屋高裁刑事第2部(鹿野伸二裁判長)は、名張事件の第10次再審請求の異議申立てを棄却する決定をおこなった。名張事件は、1961年に三重県名張市の公民館で懇親会に参加していた人たちのうちブドウ酒を飲んだ女性5人が亡くなった事件で、奥西勝さんが犯人とされた冤罪事件だ。1審の津地裁では無罪判決だったにもかかわらず検察官が控訴し、2審の名古屋高裁で逆転死刑判決が出された。

 第7次再審請求では、名古屋高裁刑事第1部が再審開始決定を出したが、検察官が異議申立をおこない、同高裁刑事第2部は再審開始決定を取り消し棄却した。一方、最高裁第3小法廷は、「科学的知見に基づく検討をしたとはいえず推論過程に誤りがある可能性がある」として高裁に審理を差し戻したが、名古屋高裁は再び申立てを棄却した。

 その後、第9次再審請求を申し立てていた2015年10月に奥西さんは無念のうちに89歳で亡くなった。同年11月に、奥西さんの妹の岡美代子さんが第10次再審を申し立てたが、2017年12月に名古屋高裁は再審請求を棄却した。これに対する弁護団の異議申立ての審理では、新たな科学的鑑定が出され、証拠開示によって冤罪の新事実が明らかになった。しかし、鹿野裁判長は期待を裏切り異議申立てを棄却したのである。

 名張事件の有罪判決は、奥西さんが公民館でブドウ酒の瓶の封緘紙を破って農薬を入れたと認定していた。弁護団は、専門家に依頼してブドウ酒瓶の封緘紙の紙片の科学的検査をおこない、封緘紙にブドウ酒製造時に使われた糊とは別の糊が検出されたとする鑑定を提出した。封緘紙に別の糊が付着していることは、真犯人が一度封緘紙をはがして開栓し、毒物を混入し、再び栓をして封緘紙を糊で貼り直したことを意味し、奥西さんの自白や確定判決の認定が誤りであることを示している。

 ところが、今回の棄却決定は、鑑定人の説明が不足し、科学的知見に基づく科学的根拠を有するとはいえないとして、新証拠を否定している。しかし、説明が不足しているというなら、鑑定人、弁護団に十分な説明を求めればいいはずだ。弁護団は、鑑定人の尋問を求めていたが、裁判所は必要ないとしておこなわなかった。

 さらに、第10次再審請求では懇親会参加者の調書が証拠開示され、複数の参加者が公民館でブドウ酒瓶に封緘紙が巻かれていたと事件直後に供述していたことが明らかになった。製造時とは別の糊が付着していることは、封緘紙を貼り直したことを示し、開示された複数の懇親会参加者が「ブドウ酒瓶に紙が巻かれていた(封緘紙が貼られていた)」と供述していることと整合し、毒物を混入した犯行場所が公民館ではないことを示している。公民館で一人でいる機会があった奥西さんが犯人とする最高裁の棄却決定の認定は誤っていたと言わざるをえない。

 今回の棄却決定は、開示された新供述を他の証拠と総合的に評価せず、一般的に関心を持って観察する対象ではない点に関する供述だから信用性がないとしりぞけているが、とうてい審理を尽くしたとはいえない。科学的な鑑定によって別の糊の存在の疑いが明らかになり、開示証拠で有罪の認定に合理的疑いが生じたのであるから再審を開始すべきだ。

 袴田事件の第2次再審請求は、最高裁が東京高裁の棄却決定を取り消し、東京高裁第2刑事部(大善文男裁判長)で差し戻しの異議審がおこなわれている。今後、弁護団が提出した血痕の色の問題に関する専門家の鑑定について、鑑定人尋問がおこなわれる見通しだ。東京高裁は、鑑定人尋問を実施し、すみやかに再審を開始すべきだ。

 狭山事件の第3次再審請求においても鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきだ。


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