pagetop

主張&声明

事実調べと証拠開示の法制化が必要だ!
冤罪をなくすための司法改革、再審法改正を国会に求めよう!

(月刊「狭山差別裁判」538号/2023年3月)

 足利事件の再審請求では、弁護団が無実を訴える菅家利和さんと犯人のDNA型が違うとする新証拠を提出し冤罪を主張、DNA再鑑定を求めた。宇都宮地裁は2008年2月に再審請求を棄却したが、即時抗告で東京高裁の田中康郎裁判長は、DNA再鑑定をおこなうことを決定し、弁護側、検察側が推薦する2人の鑑定人による再鑑定が実施された。そして、翌2009年4月末には、裁判所の嘱託鑑定が2つとも「同一のDNA型とはいえない」という結果となり、6月4日、菅家さんは千葉刑務所から釈放され、同月24日には再審開始決定が出された。2010年3月、菅家さんは再審無罪となった。

 布川事件の第2次再審請求では、弁護団が法医学者の鑑定を新証拠として提出、自白の殺害方法や犯行順序が死体の客観的状況と食い違っていることを明らかにし、自白は真実ではないと主張した。水戸地裁土浦支部は、弁護団の求めた法医学者らの証人尋問を実施し、2005年9月、再審開始決定をおこなった。検察官が即時抗告したが、東京高裁においても法医学者や取調べテープの改ざんを明らかにした専門家らの証人尋問がおこなわれ、2008年7月、再審開始決定が出された。裁判所の職権による法医学鑑定も実施されている。また布川事件では、取調べ録音テープや目撃証言などの証拠が開示され、再審開始のカギになった。無罪となった桜井昌司さんがおこした国賠裁判では、検察官の証拠不開示や警察、検察の取調べが違法だったと認められた。

 袴田事件では、第2次再審請求の差し戻し即時抗告審で、東京高裁は、重要な争点である衣類の血痕の色の問題について、弁護団が提出した新証拠を作成した鑑定人の証人尋問を、2022年7月、8月におこない、ことし3月、再審開始を決定した。大善裁判長は、検察官が弁護側への反論としておこなった血液付着衣類の味噌漬け実験の結果を検察庁に行って直接、確認している。

 無実を叫びながら死刑が執行され、妻が再審請求をおこなっている飯塚事件の第2次再審請求でも事実調べが先日、福岡地裁でおこなわれた。弁護側が提出した新証拠である、真犯人の車を目撃したという証言をおこなった男性の証人尋問である。証人尋問の中で、当時の警察の捜査の疑問も浮かび上がった。

 一方、飯塚事件の第2次再審請求では、福岡地裁は事実調べをおこなうとともに、検察官にたいして証拠開示を勧告した。しかし、検察官は「意味がない」などとして開示を拒否している。証拠開示に意味があるかどうかを検察官が一方的に判断するものではないはずだ。裁判所は検察官に開示を命じるべきだ。

 狭山事件においては、弁護団は、昨年、事実取調請求書を東京高裁に提出し、新証拠を作成した専門家鑑定人11人の証人尋問とインク資料の裁判所の職権による鑑定の実施を求めている。これまでの再審開始にいたった冤罪事件を見ても事実調べと証拠開示は再審請求の審理において不可欠であることは明らかだ。

 大川原化工機冤罪事件では、警察の捏造捜査をチェックするどころか一緒になって起訴し、いまも何ら反省していない検察官の実態が暴かれた。検察官は再審を妨害する活動は国費を使ってどんどんおこなう一方で証拠開示には応じない。こうした検察官のありかたをきびしく問い直すべきだろう。

 再審請求における検察官の証拠開示の義務化、再審開始決定に対する検察官の抗告の禁止、裁判所による事実調べなどの規定をもりこんだ再審法改正を実現しよう。取り調べの全面可視化や人質司法の改革など冤罪防止のための司法改革を進めよう。


月刊狭山差別裁判題字

月刊「狭山差別裁判」の購読の申し込み先
狭山中央闘争本部 東京都中央区入船1−7−1 TEL 03-6280-3360/FAX 03-3551-6500
頒価 1部 300円