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人権擁護法案の抜本修正を求める中央集会
異議あり! 人権擁護法案 第3時アピール行動

特別報告・韓国の人権委員会から
韓国人権委員会委員
チョン カンジャ
「解放新聞」(2002.11.11-2094)

 韓国で国内人権委員会が必要だと主張したのは、政府でも学者でもなく、みなさんのような市民団体、NGOだ。一九九八年、新しくキム・デジュン政権ができて国民による国内政権が発足し、韓国政府ははじめて国内人権委員会をつくる話を出したが、それからむしろ政府とNGOとの闘いがはじまった。三年の歳月をへてようやく「国家人権委員会法」ができ、人権委員会を設立した。この三年の経験はまさにみなさんがいま当面し、とりくもうとしている問題だ。
 韓国政府が九八年に出した法案は、日本のいまの「人権擁護法案」とまったく同じようなもの。独立性、実効性でわれわれの願いとあまりにもかけ離れており、パリ原則に照らしてあまりにも不十分だった。核心は、国内人権機関をやはり法務部傘下の一特殊法人にしてコントロールするもので、独立性も実効性も期待できないものだった。
 そのため、われわれNGOは、カソリック教会でいろんな集会を催したり、ろう城したり、法案に反対する運動を展開し、その結果、政府案は廃案になった。このあと、われわれは新しい法案づくりにのぞみ、NGOだけでなく国会議員も巻き込んで研究会や勉強会をし、最終的に九十五人の国会議員の賛同をえて新法案を提出した。
 この新法案は国会の定期会期では成立せず、臨時国会で昨年四月末にようやく通過した。十一月に人権委員会を設立し、十二月から具体的に動き出し、いま一年を迎えようとしている。
 人権委員会の一番大きな役割は、やはり身近で起きるいろいろな人権侵害や差別の問題について人権委員会に陳情するという形で、人権委員会と国民が具体的に接触すること。半年足らずでよせられた陳情は一万二千件。そのうち調査などしたのは二千八百件ある。
 このほか、重要な役割は、人権立法や人権政策にたいし、さまざまな形で関与すること。たとえば、「同時多発テロ」後、「テロ防止法案」が制定されようとしたが、人権の保護にひじょうに危険性があるため、制定に反対し、阻止した。
 そのほか、公権力の人権侵害、とくに刑務所や社会福祉施設に収容される人たちへの人権侵害の調査や救済活動をしている。
 日本で審議されようとしている「人権擁護法案」にある人権委員会の独立性、実効性といった問題は、われわれが経験したのと同じような問題。もし私が日本人ならば、現法案による人権委員会は法務省傘下の一機関に過ぎず、独立性も実効性もないため、反対を表明する。修正するにしても、新しい法を制定する意気込みで修正を求めないとなかなかいい法案にはならないだろう。法案がこのまま制定されて人権委員会が設けられれば、たとえば人事の問題や予算の問題など、やはり法務省が決めてしまう。したがって独立性も実効性も保障されない。
 韓国の人権委員会委員である私が日本の人権委員会のあり方に関心をもち、心配するのは当然の義務。日本の人権問題は、韓国の人権問題であり、東北アジア、国際社会の問題だ。私は自分の問題とうけとめている。独立性、実効性が保障される立派な人権委員会をつくるために、どうぞがんばっていただきたい。私も韓国から拍手と激励を送る。


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